小学生童話 幼稚園・保育園の童話集 福娘童話集
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こ う こ く
 


1ねんせいのせかいむかしばなし

人間に飼われるようになったけもの

にんげんに かわれるようになったけもの
フィンランド の むかしばなしフィンランド の せつめい

 むかしむかし、 ひとりの ぼくしさんが、 およめさんを もらうことに なりました。
 そこで、 そのあたりにすむ どうぶつたちを けっこんしきに まねきました。
 クマと、 オオカミと、 ヒョウと、 キツネと、 シロギツネと、 ウマと、 ウシと、 ヤギと、 ヒツジと、 トナカイが まねかれました。
 いちばんはじめに、 クマが でかけていき、 とちゅうで おとこのこに であいました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねました。
「ぼくしさんの けっこんしきに」
と、 クマが こたえました。
「いかないほうが いいよ。 クマさんの けがわは あたたかくて すばらしいだろう。 みんな けがわが ほしくなって、 クマさんを うちころして、 かわを はいでしまうよ」
 クマは おとこのこの いうことを きいて、 もりへ かえっていきました。
 こんどは、 オオカミが やってきました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねました。
「ぼくしさんの けっこんしきに」
と、 オオカミが こたえました。
「いかないほうが いいよ。 オオカミさんの けがわは とても やくに たちそうだからね。 もう、 もりへ かえれなく なるかもしれないよ。 それでも いいのかい?」
 オオカミは クマと おなじように、 けっこんしきに いくのをやめて かえりました。
 すると こんどは、 ヒョウが きました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねると、
「ぼくしさんの けっこんしきに」
と、 ヒョウが こたえました。
「いかないほうが いいよ。 ヒョウさんの けがわは、 にんげんたちが みんな ほしがっているからね。 むこうヘつくと つかまえられて、 もうにどと あるけなく なってしまうよ」
 ヒョウは おとこのこの いうとおりだと おもって、 もりヘ かえることに しました。
 そのつぎに、 キツネが きました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねました。
「ぼくしさんの けっこんしきに」
と、 キツネが こたえました。
「きをつけないと だめだよ。 キツネさんの けがわは とても にんきが あるんだよ。 いのちを おとしに いくことに なるかもしれないよ」
 これを きくと、 キツネは クルリと むきをかえて、 もりの なかへ にげていきました。
 こんどは、 シロギツネが きました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねました。
「ぼくしさんの けっこんしきに」
「おやまあ、 きのどくに。 そこへいって なにを するつもりなんだい。 イヌが きみを たべちゃうだろうよ」
 シロギツネは ビックリして、 かえっていきました。
 こんどは、 ウマが やってきました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねました。
「ぼくしさんの けっこんしきに」
「いかないほうが いいよ。 ウマさんは ちからもちだから、 つかまえられて はたらかされちゃうよ。 もう あそべなく なっちゃうよ」
と、 おとこのこは いいましたが、 ウマは、
「だいじょうぶさ。 たとえ ロープを つけられたって、 にげたくなったら、 ロープなんか きってくるから」
と、 いって、 けっこんしきの ばしょヘ いそぎました。
 そして そこへつくと、 ウマは はたらかされることに なりました。
 つぎに、 メスウシが やってきました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねました。
「ぼくしさんの けっこんしきに」
「いかないほうが いいよ。 ウシさんは ミルクを たくさん だしてくれるし、 ウシさんの かわは やくにたつし、 そのうえ おにくは おいしいから、 にんげんたちは ほうっては おかないと おもうよ」
「だいじょうぶよ」
 おとこのこの いうことを きかず、 メスウシは たびを つづけました。
 そして にんげんたちのところに つくと、 ロープで しばられて、 かわれることに なりました。
 こんどは、 ヤギが やってきました。
 ヤギも、 おとこのこの いうことを きこうとは しませんでした。
 ですから、 ウマや ウシと おなじように、 にんげんに かわれることになりました。
 そのつぎに、 ヒツジが とおりかかりました。
 おとこのこは、 にんげんたちが ヒツジの けと にくを ほしがっているから、 いかないほうがいいと いって とめました。
 けれども、 そんなことには おかまいなしに、 ヒツジは さっさと けっこんしきに、 いってしまいました。
 そして とうとう、 かえってきませんでした。
 さいごに、 トナカイが やってきました。
「どこへ いくの?」
と、 おとこのこが たずねました。
「ぼくしさんの けっこんしきに」
「トナカイさんは、 どのどうぶつよりも はやくはしれるんだから、 みんなが きみを かえしちゃくれないよ」
「わたしなら しんぱい いりません。 わたしを しばろうとしたって、 さっと にげてきますよ」
 トナカイは そういって、 けっこんしきの ばしょへ いそぎました。
 トナカイは おとこのこの いったとおり つながれて、 ソリを ひかされるように なりました。
 さて、 おとこのこの ちゅういをきいた どうぶつたち 『クマと、 オオカミと、 ヒョウと、 キツネと、 シロギツネ』は、 いまでも じゆうに もりのなかを はねまわっています。
 ところが 『ウマや、 ウシや、 ヤギや、 ヒツジや、 トナカイ』の ように、 いうことを きかなかった どうぶつたちは、 それからと いうもの、 ずっと にんげんに かわれるように なったのです。

おしまい

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