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1月18日のイソップ童話
  
  
  
泉のほとりのシカとライオン
    のどのかわいたシカが、泉のほとりへやってきました。
    水を飲んだ後、ふと見ると、自分のかげが水にうつっています。
    大きくていくつもの枝にわかれた角は、われながらうっとりするほどりっぱです。
    シカはすっかりとくいになりました。
    ところが、足を見るとヒョロヒョロしてたよりない感じなので、がっかりしてしまいました。
  「せっかく、これほどりっぱな角を持っているのに、この足ではなさけない」
    シカが水にうつった自分の姿をながめて考え込んでいるところへ、とつぜんライオンがあらわました。
    シカはいそいで逃げました。ライオンは追いかけましたが、シカは足の速い動物ですから、いくら強いライオンでも追いつきません。
    それどころか、シカはずんずんライオンを引き離してしまいました。
    野原がつづいているあいだは、シカはライオンのずっと先を逃げてゆくことができました。
    そのうちに、シカは森にさしかかりました。
    すると、大きな角が木の枝に引っかかってうまく走れなくなりました。
    そうして、ぐずぐずしているうちに、ライオンに追いつかれて、つかまってしまいました。
    ライオンのえじきになったシカは、死ぬ前に心の中でいいました。
  「なさけないことだ。わたしににくまれていた足が、わたしを助けてくれたのに、わたしがじまんしていた角のために、こうして死ななければならないとは」
  
    このシカと同じように、あぶない目にあったとき、ふだんはあまり信用していなかった友だちがわたしたちを助けてくれ、はんたいに、いつも信じていた友だちがわたしたちを見捨てることがあるものです。
おしまい