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1月18日の日本の昔話
  
  
  
  とっつくひっつく
 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
   ある日、おじいさんはとおくの畑へいったのに、だいじなべんとうをわすれてしまいました。
   そこで、おばあさんがあとから、べんとうをもってでかけていくと、とちゅうのくらい森で、
  「とっつくぞう、ひっつくぞう」
  と、おそろしいこえがきこえてきました。
   おそろしくなって、かけだしたおばあさんは、ようやくおじいさんの畑にたどりつくと、そのことを話しました。
  「かえりもおなじところを、とおらないといけないし、こまったことじゃ」
   おばあさんがいうと、
  「そのこえがしたら、『とっつくなら、とっつけ。ひっつくなら、ひっつけ』と、いってみたらどうじゃ」
   おじいさんがいったので、おばあさんもしょうちして、かえっていきました。
   するとやっぱり、
  「とっつくぞう、ひっつくぞう」
  と、おそろしいこえ。
  「とっつくなら、とっつけ! ひっつくなら、ひっつけ!」
   おばあさんがおもいきってさけぶと、どこからともなく小判がとんできて、ピタピタとからだにひっつきました。
   おばあさんがこしをぬかしていると、しんぱいしたおじいさんがかけつけてきました。
   ふたりはおばあさんにひっついた小判のおかげで、たいしたお金もちになりました。
   すると、となりのよくばりばあさんが、
  「どうして、こんな金もちになったか、おしえろやい!」
  と、やってきたので、ありのままにおしえると、さっそくつぎの日に、おなじことをまねしてみました。
   ばあさんはじいさんに、わざとべんとうをわすれさせて、とおくの畑へいかせました。
   そして、じいさんのところへべんとうをもっていくと、そのかえりにやっぱり、
  「とっつくぞう、ひっつくぞう」
   へんなこえがきこえてきました。
   ばあさんがよろこんで、
  「とっつくなら、とっつけ。ひっつくなら、ひっつけ。うんとひっつけ」
  と、さけぶと、マツヤニのかたまりが、どこからともなくとんできて、からだじゅうがベタベタです。
  「小判をかついでかえろう」
   たのしみにやってきたじいさんも、マツヤニを小判とまちがえて、ばあさんにさわったものですから、ふたりはくっついたきりはなれなくて、どうにもこうにもこまったそうです。
おしまい