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2月26日のイソップ童話
  
  
  
旅に出たディオゲネス
    ディオゲネス(→詳細)はギリシャの哲学者で、するどい皮肉なことをいうのがじょうずな人でした。
    ディオゲネスが旅に出て、歩いていきますと、川の岸につきました。
    川の水はまんまんと、あふれそうです。
    ディオゲネスは、はたとこまって、岸に立ったまま、とほうにくれていました。
    この川のそばにすんで、旅人たちを助けて、川をわたらせるのを仕事にしている男がいました。
    ディオゲネスがこまっているのを見たこの男は、そばへ寄ってきて、ディオゲネスを自分の肩にのせました。
    そして、むこう岸まで親切にはこんでくれたのです。
    ぶじに川をわたることができたディオゲネスは、親切な男に、お礼をしたいと思いましたが、とてもびんぼうなのでお礼ができません。
  「ああ、こんなにびんぼうでなければ、この人にたっぷりお礼ができるのに」
  と、ざんねんに思いました。
  「どうやって、感謝をあらわせばよいだろう」
    ディオゲネスは、すっかり考えこんでしまいました。
    ディオゲネスがこうやって、考えこんでいるうちに、あいての男は、川のむこうにべつな旅人がきたのをみつけると、さっさと川をわたってむこう岸へもどりました。
    そして、さっきと同じように、肩にのせてわたしてやりました。
  それを見たディオゲネスは、男に近づいて、こう言いました。
  「わたしは、もうあなたにお礼をしたいとは思いませんよ。わたしがディオゲネスだとわかったから、親切にしてくれたと思ったのに、そうではなくて、あなたは、ただ、だれかれなしに、川をわたらせるのが趣味なのだから」
  
    この話は、あいてがくだらない人か、りっぱな人かも知らないで、だれかれなしに親切にする人は、親切な人といわれるよりも、見さかいのつかない人だといわれるおそれがある、ということをおしえています。
おしまい