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9月16日のイソップ童話
  
  
  
ヘルメスと彫刻家
    商売の神ヘルメス(→詳細)は、あるとき、自分が人間たちのあいだで、どのくらい尊敬されているかを知るために、人間の姿になってひとりの彫刻家のアトリエヘやってきました。
    見ると、神がみの中でいちばんえらいゼウス(→詳細)の像があります。
  「これは、いくらで売るのかね」
  と、ヘルメスはたずねました。
  「1ドラクマです」
    ヘルメスは、にやりと笑って、
  「じゃあ、そっちにあるヘラ(ヘラはゼウスのおくさん)の像はいくらだ」
  「こっちのほうが高いですよ」
    ヘルメスは、自分をかたどった像もあるのに気がつきました。
    なにしろ自分は商売の神さまだし、ゼウスの神のおつかい役もつとめるくらいだから、きっと、とくべつに人間からあがめられているだろう、と思って、
  「このヘルメスはいくらだ」
  と、たずねました。すると彫刻家は、
  「そうですねえ。ゼウスとヘラと、2つともかってくれたら、これはおまけとして、ただであげますよ」
  
    この話は、だれからも尊敬されていないのに、自分だけがえらいような顔をしている、うぬぼれやにむく話です。
おしまい