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11月21日の日本の昔話
  
  
  
  石のいも
 むかしむかし、ある村に、空海(くうかい→詳細)という名のお坊さんがやってきました。
  お坊さんは、朝から何も食べずに、山をこえ谷を渡り、やっとこの村にたどりついたのです。
  「ああ、腹がへった。目が回りそうじゃ」
  すると向こうから、一人の女の人が歩いてきました。
  女の人は、畑から帰ってきたところでした。
  手にザルをかかえ、その中にはおいしそうなイモが、いっぱい入っていました。
  それを見て、お坊さんは思わず声をかけました。
  「お願いじゃ、そのザルの中のイモを1つでいい、わしにくだされ」
  女の人は、ジロリとお坊さんを見ました。
  この女の人は、みすぼらしいお坊さんにイモをあげるのがいやだったので、
  「このおイモは食べられませんよ」
  「えっ、どうして?」
  「これは、おイモそっくりの石なんです」
  「そうか、それは仕方がない」
  お坊さんは頭を下げると、また、トボトボと道を歩いていきました。
  「うふふ。うまくいったわ。だれが、大事なおイモをあげるもんですか」
  次の年の秋になりました。
  「今年も、おいしいおイモがたくさん取れますように」
  あの女の人は、大きなザルをかかえて、自分の畑に行きました。
  さっそく、畑の土をほり返してみますと、去年よりも大きなイモがドッサリと出てきます。
  「今年は豊作だわ。それに、ズッシリと重くて、よく実がつまっている。・・・しかし、本当に重たいわね。まるで石みたい。・・・あれ、これは!」
  イモだと思っていたのは、イモそっくりの石でした。
  「あら、これも、これも、これも、ぜんぶ石だわ!」
  女の人の畑のイモは、全てイモにそっくりな石だったのです。
  そのとき、女の人は去年の今ごろ、お坊さんにうそをついたことを思い出しました。
  「ああ、あのとき、わたしがうそをついたから、神さまが天罰(てんばつ)をあたえたんだわ」
女の人は反省して、それからはまずしい人にほどこしをする、心やさしい人になりました。
おしまい