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1月5日の小話
たこあげ
   むすこがたこをあげておりましたが、いっこうにうまくあがりません。
   それをみた親父が、
  「まてまて、そうじゃない。いま、おれがあげてやるから、よくみていろ」
  と、いって、むすこからたこをうばいとると、またたくまに、たこを空高くあげてみせました。
  「どうだい。うまいもんだろう」
   親父は、すっかりおもしろくなって、むすこにたこをわたそうとはしません。
   横からむすこが、
  「とうちゃん、おれにもやらせておくれ」
  と、いって、せがみます。
  「えい、うるさい。待ってろ!」
  「ねえ、ねえ、やらせておくれよ」
   むすこが、しつこく親父の着物をひっぱると、親父はこわい顔をして、
  「ええい、やかましいやつだ。おまえなど、たこあげにつれてこなければよかった」
 まあ、こんな親が、ときどきいます。
おしまい