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4月7日の小話

あごとかかと
   ふたりの男が、つまらぬことで、けんかをはじめました。
  「なにお・・・」
  「このやろう」
   ふたりとも刀をぬいてきりあい、ひとりはあごをきりおとされ、ひとりは足のかかとをきりおとされました。
  「まあまあ、どういうわけかは知らぬが、きりあいなんぞ、やめてください」
  と、年よりがとめに入って、ようやくふたりはおさまり、たがいに、きりおとされたものをひろって帰りました。
   ふたりは、それぞれ医者にかよってちりょうすると、きりおとされたものはみごとにくっついて、もとのようになおりました。
 ところが、ふしぎなことに、ひとりのかかとからは、ひげがはえ、もうひとりのあごには、冬になると、あかぎれがきれるということです。
おしまい