
  福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 4月の世界昔話 > クモにされた女の子
4月7日の世界の昔話
  
  
  
  クモにされた女の子
  ギリシアの昔話 → ギリシアの国情報
 むかしむかし、ギリシアの国に、たいそう機織り(はたおり)のじょうずな女の子がいました。
   女の子の名まえは、アラクネといいます。
   アラクネは、毎日、毎日、機織り機の前にすわって、いろいろなもようの布をおりました。
   アラクネのおるおり物の美しさは、たいへんな評判(ひょうばん)で、国じゅうに知れわたりました。
   いや、国じゅうどころか、外国にまで有名になりました。
   そして遠くの国からも、わざわざアラクネの機織りを見にくる人もいたのです。
  「まったく、アラクネの織り物ときたら、すばらしい」
  「もようの美しさは、目がさめるようね」
  「世界一の織り物だ」
   みんながほめるので、アラクネは得意になって、いばるようになりました。
  「そのとおり、世界中で、あたしぐらい機織りの上手な者はいないでしょう。機織りの神さまのアテナさまだって、あたしほど上手におることはできないわ」
   そのうわさを聞いたアテナは、
  「なんてうぬぼれの強い子だろう。よし、わたしがいって、たしなめてやろう」
  と、いいました。
   そしておばあさんに姿を変えると、アラクネの家へいきました。
  「なるほど、おまえさんはなかなか機織りが上手だね。大したもんだ。でもね、いくら上手だからって、神さまをバカにしてはいけないよ」
   アテナがいうと、アラクネはいばっていい返しました。
  「だって、あたしはアテナさまよりうまいんですもの。うそだと思うなら、競争(きょうそう)してもいいわ」
  「なにをなまいきなっ!」
   アテナは、パッと元の姿になりました。
  「さあ、わたしと機織りの竸争をしよう」
  「いいわ。あたしの腕前を見せてあげる」
   アテナとアラクネは、機織りの競争を始めました。
   二人とも、ものすごい勢いで布をおりはじめました。
   どちらも負けるものかと、夢中で布をおります。
   やがて、二人ともすばらしい布をおりあげました。
   アテナのおったもようは、美しい神さまの姿でした。
   ところがアラクネのおったもようは、神さまたちがけんかをしているようすでした。
  「おまえは、よくも神さまをバカにしたね!」
   アテナはカンカンにおこって、アラクネのおった布をズタズタにひきさくと、アラクネの頭をつえで三回たたきました。
   すると、どうでしょう。
   アラクネのからだはみるみるうちに小さくなり、フサフサと美しかった髪の毛もなくなり、おなかがふくらんできました。
   そして、手や足は八本になりました。
   おまけに、毛むくじゃらです。
   アラクネは、みにくいクモにされてしまったのです。
  「うぬぼれのおバカさん、そんなにじまんするのなら、いつまでもはたをおっているがいい」
   アテナはそういって、クモになったアラクネをにらみつけました。
   クモになったアラクネは、今でも銀色の糸を出して、一生けんめい機(はた)をおっているのです。
おしまい