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5月19日の小話
わしにもいっぱい
   夜おそく、台所のほうで、ごそごそ音がします。
  「ははーん、さては、どろぼうだな」
   この家の主人は、武芸(ぶげい)がたっしゃのうでじまん。
   このときとばかりに、どろぼうにとびかかり、しばらくして、どろぼうを取りおさえました。
  「おおっ、えっ、えらく、骨をおらせやがって」
  と、あらい息をしながらいうと、そばから、女房がいいました。
  「お疲れ様、お水はいかがですか?」
  「おお、いっぱいくれ」
   すると、おさえられていたどろぼうも、
「おかみさん、わしにも、いっぱいください」
おしまい