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7月28日の小話
とこを取れ
   むかし、山おくの村に、みまわりのやくにんがやってきて、しょうやさんの屋敷にとまりました。
   ばんごはんがすむと、やくにんは、しょうやさんに
  「とこを取れ」
  と、いいつけました。
   やくにんをとめるために、せっかく、きれいな、とこのま付きのざしきをつくったのですが、いいつけには、さからえません。
  「はい、すぐにおとりいたします」
   しょうやさんは、だいくをよんで、さっそく、とこのまをとりこわし始めました。
   おどろいたのは、やくにん。
  「これ、なにをする!」
  「とこを取れと、もうされましたので」
「なにをいうのだ。とこを取れ、というのは、ふとんをしけということだ」
おしまい