
  福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 7月の世界昔話 > 人魚のしかえし
7月28日の世界の昔話
  
  
  
  人魚のしかえし
  デンマークの昔話 → デンマークの国情報
 むかしむかし、北のつめたい海に、一人のうつくしい人魚(にんぎょ)がすんでいました。
   この人魚は五頭のウシを飼っていて、とてもだいじにしていました。
   人魚は毎日、ウシを近くの島までつれていっては、おなかがいっぱいになるまで草を食べさせてやりました。
   ところでこの島には、ちょっといじわるな人間たちが住んでいました。
   その人たちは、
  (この島の草は、人魚の飼っているウシになんか食わせてやりたくないな)
  と、思っていましたから、ある時とうとう、人魚の飼っているウシをとってしまいました。
  「わたしのウシをかえしてください!」
   人魚はないて、人間たちにたのみました。
  「いやだね。かえすもんか。でも、おまえがこしにまいている帯(おび)をくれたら、ウシをかえしてやる」
  「だけど、この帯は人魚だけしか使うことができないんです。人間が持っていても、少しも役に立たない帯ですよ」
  「うそをつくな! その帯には宝石がたくさん付いているじゃないか。その宝石があったら、おれたちは大金持ちになれる。さあ、ウシをかえしてやるから帯をよこせ!」
   人魚はウシをとてもかわいがっていましたから、帯を人間たちに渡して、ウシをかえしてもらいました。
   でも、なんだかくやしくてたまりません。
   そこで島の海岸まできたところで、ウシに言いました。
  「さあ、砂をほって、いじわるな人間たちにしかえしをしてやりなさい」
   ウシたちは砂をツノでつついたり、足でけったりしはじめました。
   砂が風でまいあがり、いじわるな人間たちの住んでいる村の方へ飛んでいきました。
   そして、人間たちの家をうめてしまいました。
   あわててにげだした人間たちは、
  「ふん! こっちには宝石のいっぱいついた帯があるんだ。これがあれば、他の村で大きな城だってたてられるさ」
  と、ニコニコ顔です。
   でも、人魚からとりあげた帯をよく見ると、宝石など1つもついていません。
   いつまのにかその帯は、ただのコンブにかわっていたのでした。
おしまい