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6月3日の日本民話

びんぼうになりたいお金持ち

びんぼうになりたいお金持ち
兵庫県の民話

 むかしむかし、あるところに、とてもお金持ちの家がありました。
「もう、お金なんかいらない」
と、いつも言っているのに、どうしたことか、お金はどんどんたまるばかりです。
 そこでまずしい人たちに、お金をかしてあげることにしました。
 そのとたん、お金持ちの家に大勢の人がおしかけてきて、ごはんを食べるひまもありません。
 しばらくたつと、今度はかりたお金を返しにくる人もふえてきて、もうたいへんないそがしさです。
(弱ったなあ。このままじゃゆっくりねむることもできん。どうしたものか?)
 お金持ちは、いろいろと考えて、
(そうか、お金がたまりすぎるからこんな事になってしまったのだ。のんびりくらすには、貧乏(びんぼう)になればいいんだ)
と、気がつきました。
 さっそくお金持ちは家の表に大きなはり紙をして、つぎのように書きました。
《おかげさまで、お金はほとんどなくなりました。だから今日かぎりでお金をかすのをやめることにします。お金をかりた人は、もう返さなくてもけっこうです》
 はり紙のおかげで家へ来る人もいなくなり、やっとしずかになりました。
(さあ、これで貧乏になれるぞ)
 ところがもともとお金持ちの家だったので、立派(りっぱ)な道具やこっとう品がたくさんあり、売ればたちまちお金がたまってしまいます。
 そこで、これも近所の人にただでやり、屋敷の庭にはえているみごとな植木もぜんぶ切りたおして、たき木にしてしまいました。
 ついでに庭のあちこちにある、大きな石までとりのぞくことにしました。
「なにも、そこまでしなくても」
 近所の人がいいましたが、お金持ちは、
「いや、なんとしても貧乏になり、これからはのんびりくらすのだ」
と、言って、大勢の人を呼んで石を運び出しました。
 すると、取り除いた石のあとから、大きなつぼがいくつも出てきました。
「おや? なんだろう?」
 おどろいてふたをとると、どのつぼにも金ぴかの小判がつまっています。
 どうやらこの家の先祖(せんぞ)がうめておいたものらしく、つぼのふたのうらには、
《これを、子孫(しそん)にのこす。大切に使ってくれ》
と、書いてありました。
 これには、さすがのお金持ちもまいりました。
「なんて事だ。ご先祖さまが大切に使ってくれと書いてあるので、人にやるわけにもいかないし、・・・まったく、貧乏したいと思っているのに、こんな大金が出てくるなんて、わしはよっぽど運の悪い人間だ」
と、何度もためいきをついたという事です。

おしまい

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