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12月4日の日本民話
天へとばされた男の子
秋田県の民話
むかしむかし、ある家に、人のいうことを聞かない男の子がいました。
そのうえに、男の子はたいへんなイタズラもので、いくらお父さんやお母さんがしかってもイタズラをやめません。
ある日の事、家でおけ屋さんをよんで、ふろおけの修理(しゅうり)をしてもらうことになりました。
ところが男の子は修理の道具をいじったり、おけをしばっている竹のたがをたたいたりと、イタズラばかりします。
「あぶないから、はなれていろ!」
おけ屋さんがいくら言っても、男の子は聞きません。
そのうちにおけのたががパチンとはずれて、男の子をはじき飛ばしてしまったのです。
勢いよくはじき飛ばされた男の子は、どんどん空へのぼっていき、ついには見えなくなってしまいました。
さあ、大変です。
でも空へ消えてしまっては、さがしにいくわけにもいきません。
お父さんもお母さんは、一日中空をながめては、泣いてばかりいました。
さて、天までとばされた男の子が雲の上でシクシクと泣いていると、美しい娘さんがやってきて、
「どうしてないているの?」
と、たずねました。
そこで男の子は、おけのたがをイタズラしていて飛ばされたことを、正直に話しました。
すると、娘さんが言いました。
「人のいうことを聞かないでイタズラばかりするから、こんなところへ飛ばされるのです。人のいうことを聞くようになるまで、ずっとここにいますか?」
「いやだ、いやだ。家に帰りたいよう」
「それなら、これからは人のいうことを聞きますか?」
「聞くよ、聞くよ」
「よろしい。それなら、わたしが家にもどれるようにしてあげましょう」
娘さんは雲の上の家につれていくと、男の子にごはんを食べさせて、大きなカサを広げて言いました。
「このカサにつかまって下へおりなさい。このカサは、カサのえを向けた方におりていきますから」
男の子はさっそくカサにつかまり、下へとびおりました。
カサは風にのって、フワリフワリとおりていきます。
どんどんおりると、自分の家が見えてきました。
男の子はカサのえを、家のほうに向けました。
家の前では、みんなが手をふっています。
「あっ、父ちゃんと母ちゃんだ!」
よく見るとおけやさんもいますし、となりのおじさんもおばさんもいます。
みんな心配して、集まってくれていたのです。
カサはどんどんさがっていき、男の子はみんなの前におりました。
すぐにお父さんがかけてきて、男の子の頭をコツンとたたくと、うれしそうに男の子をだきあげました。
「よく、もどってきたな。心配させやがって」
お母さんもかけよってきて、男の子の手をにぎりました。
「よかった、よかった」
みんなが、口ぐちに言いました。
その日から男の子は人のいうことをよく聞き、イタズラをしなくなったという事です。
おしまい