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5月6日の世界の昔話
  
  
  
コウノトリ
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 むかしむかし、ある山かげの家の屋根に、コウノトリが巣(す)を作っていました。
  巣の中には、四わのヒナがいます。
  それを、お母さんのコウノトリがだいていました。
  やねの上でお父さんのコウノトリは、一本足でたって見はりをしていました。
  山すその道で、村の子どもたちがあそんでいました。
  やねの上のコウノトリを見て、こんなうたをうたいました。
  ♪コウノトリ、コウノトリ
  ♪一本足のたちんぼう
  ♪おかみさんは、巣のなかで
  ♪四わのヒヨコをだいてるが
  ♪一ばんめーは、しめられて
  ♪二ばんめーは、なぐられて
  ♪三ばんめーは、まるやきで
  ♪四ばんめーは、むかれるぞ
  これをきくと、コウノトリの子どもたちはビックリしてしまいました。
  「ねえ、お母さん、人間の子が、あんなわるくちをいってるよ」
  「ねえ、ぼくたち、ほんとにしめられるの?」
  「ほんとにやかれるの?」
  くちぐちに、しんぱいそうにききました。
  するとお母さんは、大きく首を横にふって、
  「そんなことが、あるもんですか!」
  と、いいました。
  「心配しなくていいんですよ。はやく大きくなって、みんなでひろい草原の方へとんでいきましょうね。草原にはね、大きなお池があって、それはそれはたのしいのよ」
  「わあ、すてきだなあ」
  ヒナドリたちは、よろこんでいいました。
  つぎの日も、村の子どもはコウノトリを見ると、
  ♪一ばんめーは、しめられて
  ♪二ばんめーは、なぐられて
  ♪三ばんめーは、まるやきで
  ♪四ばんめーは、むかれるぞ
  と、うたいました。
  ヒナドリたちは、それをきくと、
  「いやだなあ。またあんなこといって」
  「ほんとうに、だいじょうぶかしら?」
  と、かおをしかめました。
  「あんなわるくち、きかないふりをしておいで」
  と、お母さんのコウノトリはいいました。
  「それよりも、もうそろそろ、とぶおけいこをしなければいけません。いい。ほら、こういうふうにくびをあげて、こんなふうに足をそろえて、いち、に。いち、に。・・・このれんしゅうをするのです」
  「はーい。いち、に。いち、に」
  四わの子どものコウノトリは、お母さんのするようにしてみましたが、なかなかうまくできません。
  ヨロヨロして、巣の外へころがりおちそうになってしまいました。
  でも、毎日毎日れんしゅうしているうちに、うまくできるようになりました。
  そして、ついにとべるようになったのです。
  「さあ、ひろい世の中へ、でていくんだ」
  コウノトリたちは、もう村の子どもの歌などなんでもありません。
  みんな目をかがやかせて、パタ、パタ、パタ、パタと、あかるい空へとびたっていきました。
おしまい