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6月6日の世界の昔話
  
  
  
  エンドウ豆の上のお姫さま
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 むかしむかし、ある国に王子さまがいました。
   王子さまも年頃で、そろそろ、おきさきをむかえたいと思いました。
   けれど王子さまにふさわしいおきさきは、本物の完全なお姫さまでなくてはなりません。
   そこで王子さまは、世界じゅうを旅して回り、どこから見ても完全なお姫さまをさがしました。
   ところが、どのお姫さまも、美人でなかったり、品がなかったりして、どうしても王子さまのおめがねにかないません。
   王子さまはガッカリして国へもどると、すっかり気持ちが沈んでしまいました。
   そんなある夜のこと、ひどいあらしの中をだれかがたずねてきました。
   城の門をあけると、雨にぐっしょりぬれたひとりの娘が立っていました。
  「わたしは、王子さまがおさがしになっている、本物の姫です」
   娘がそういうので、その夜は城にとめてやることにしました。
  「ほんとうのお姫さまかどうかは、すぐにわかることですよ」
   王子さまのお母さんはそういうと、娘のベッドにちょっとした工夫をしました。
   まず一粒のエンドウ豆を置き、その上にしきぶとんを二十枚もかさねて、さらに二十枚の羽根ぶとんをかけた上に、娘を寝かせたのです。
   つぎの朝、お母さんは娘に、ベッドの寝心地(ねごこち)はどうだったかたずねました。
   すると娘は、眠そうな目をこすりながら、
  「せっかくのおもてなしですが、寝心地が悪くて、少しも眠れませんでしたわ」
  と、答えたのです。
   お母さんはさらに聞きました。
  「寝心地がわるいといいましたが、どのように悪かったのですか?」
  「はい。ベッドの下に、なにかが入っていたのではありませんか。背中にあざがついてしまいました」
   お母さんは、娘が本当のお姫さまだと思いました。
   だって、たった一粒のエンドウ豆であざができてしまうなんて、ふっくらしたベッドでしか寝たことのない人に決まっています。
   こうして王子さまは、やっと本物の完全なお姫さまを、おきさきとしてむかえることができたのです。
おしまい