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7月30日の世界の昔話
  
  
  
  オオカミ退治
  フランスの昔話 → フランスの国情報
 むかしむかし、キツネがウナギをくわえてうちへかえってきますと、おかみさんと子どもたちがおなかをすかせてまっていました。
  「ああ、きょうはごちそうだあ」
   子ギツネたちは大よろこびで、くしにさしたウナギが火の上でやけるのを見ていました。
   ところがこのとき、うちのまえをオオカミがとおりかかりました。
  「おや? クンクンクン、いいにおいだな」
   おなかがペコペコのオオカミは、キツネの家へはいろうとしましたが、キツネは戸口をしっかりとしめているので、はいることができません。
  「おいおい、キツネくん、あけてくれよ。いいはなしがあるんだ」
   キツネはその声をきいただけで、森の王さまだなとおもいました。
   らんぼうもののオオカミは、王さまというあだながついているのです。
   子ギツネたちはこわがって、ブルブルとふるえました。
  「はやくあけてくれよ」
  と、オオカミは戸をたたきます。
  「だれだい?」
  と、キツネがききかえしますと、
  「おれだよ」
  「おれって、だれだい?」
  「なかまのものだよ」
  「ほう、わたしはドロボウかなと、おもいましたよ」
  「いや、ちがうよ。あけてくれ」
  「だめです。きょうはお坊さんがうちにくる日です。お坊さんでないかたは、かえっていただきます」
  「じゃあ、いますぐお坊さんになるよ」
  「では、お坊さんになるしょうこを見せてください。それにはまず、あたまのけをそらないといけませんよ」
   オオカミはしばらくかんがえて、いいました。
  「それもそうだな。じゃあ、ちょっとあたまをそってくれないか?」
  「では、戸口にあながあいているので、そこにあたまをつけてみてください。わたしがあたまをそってあげたら、はいってもいいですよ」
  「それでは、そうしよう」
  と、オオカミは戸口のあなに、あたまをおしつけました。
  (よし、いまだ!)
   キツネは、にえたぎっているおゆを、ザーッとオオカミのあたまにかけました。
  「うわーっ、あつい、あつい!」
   オオカミはなきべそをかきながら、いのちからがらにげていきました。
  「子どもたちよ。オオカミ退治はこうするんだよ」
   キツネがそういいながら子どもたちのほうを見ると、子どもたちはまんぞくそうに、おなかをさすっています。
   お父さんがオオカミ退治をしているあいだに、子どもたちはごちそうのウナギをぜんぶたべてしまったのでした。
おしまい