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10月21日の世界の昔話
  
  
ほらふき男爵 かりの名人
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 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
   みんなからは「ほらふき男爵」とよばれておる。
   みんなはわがはいのことを、かりの名人というが、それにはこんなわけがあるんじゃ。
   ある日、かりの帰り道。
   わがはいはみずうみに、たくさんのカモがおよいでいるのを見つけたんじゃ。
   わがはいは近く、お客さんを大ぜいよんでいるので、そのカモをぜんぶとりたいと思った。
   しかし手元には、鉄砲(てっぽう)の玉が一ぱつしかのこっておらん。
   朝からのかりで、つかいはたしていたんじゃ。
  「うーん、なにかいい方法はないだろうか。・・・そうだ、いいものがある」
   べんとうののこりに、ハムのあぶらみがあることを思い出したんじゃ。
   わがはいはイヌのつなをほどいてほそ長くし、それにあぶらみをくくりつけた。
   あぶらみをつけたつなのはしをみずうみになげこむと、アシのしげみにかくれてようすをうかがった。
  「よしよし、きたぞ、きたぞ!」
   カモがやってきて、ハムのあぶらみをのみこんだ。
   ここでひとつ、教えておいてやろう。
   ハムのあぶらみは消化がわるいので、カモがのみこんでも、すぐにおしりから出てくるのじゃ。
   そしてそのおしりから出てきたハムのあぶらみを、後ろからついてきた、二番目のカモがのみこんだんじゃ。
   ハムのあぶらみは消化がわるいので、二番目のカモのおしりからも出てきた。
   それを、三番目のカモがのみこみ、四番目、五番目と、つぎつぎにのみこんで、とうとう、みずうみにいた百羽のカモぜんぶがつなにつながったのじゃ。
  「これは、大量じゃぞ!」
   わがはいはカモのつなを体にグルグルと六回まきつけると、そのまま帰ろうとしたんじゃ。
   ところがしばらく行くと、カモたちがいきおいよくはばたいたので、わがはいはカモたちといっしょに大空高くまい上がったんじゃ。
   だが、わがはいは少しもあわてず、うわぎのすそでかじをとると、カモたちをうまくわが家の方へつれていったんじゃ。
   だが、わが家のま上まできたものの、どうしておりたらよいものか。
   そこでわがはいはつなを引きよせると、カモの頭をなでてやった。
   すると、カモたちはおとなしくなり、フワリフワリと下りはじめたのじゃ。
   そしてそのまま、わがはいは屋根のえんとつから家へと入っていった。
   それからというもの、わがはいが、『かりの名人』だということは、だれもうたがわなくなったのじゃ。
   では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい