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11月12日の世界の昔話
  
  
  
  しょうじきディエロ
  イタリアの昔話 → イタリアの国情報
 むかしむかし、ある村に、ディエロという若者がいました。
   ある日のこと、お母さんはディエロにたんものを一たんわたして、どこかで売ってくるようにいいつけました。
  「いいかいディエロ、あんまりペラペラしゃべる人はしんようしてはいけないよ。おまえをだまそうとしているんだからね。口かずのすくない人を見つけて売っておいで」
   お母さんにそういわれて、ディエロはたんものをかかえて町へ売りに出かけました。
  「えー、たんもの。たんものはいらねえか」
   大声でどなりながら、あるいていくと、
  「たんものだって? どんなたんものだい。よく見せてごらん」
  と、そばへよってきた人がいました。
   でもディエロは、「おしゃべりな人をしんようしてはいけない」という、お母さんのことばをおもいだしました。
   そこで、
  「あんたには、うれないよ」
   そうこたえると、ふりむきもせずにあるいていきました。
   またしばらくすると、
  「たんもののねだんは、いくらだい?」
  と、たずねた人がいましたが、ディエロはへんじをしないままあるいていきます。
   これでは、たんものが売れるはずはありません。
   とうとうディエロは、たんものをかついだまま森の中へはいっていきました。
   そこには大きな石でつくった、神さまのほりものがたっていました。
   そのまえまでくると、ディエロは、
  「こんにちは」
  と、声をかけました。
   でも、ほりものの神さまが、へんじをするはずはありません。
  「おや? あんたは、しゃべるのがきらいなんだね」
   へんじをしないほりものの神さまに、ディエロは大よろこびです。
  「おれは、あんたのような人をさがしていたんだ。さあ、このたんものをかっておくれ。お金はあしたもらいにきますからね」
  と、ディエロはたんものをそこへおいて、家にかえっていきました。
   家に帰ってきたディエロから、この話をきいたお母さんはガッカリしていいました。
  「おまえは、またへまをしたんだね。そんなことをしたって、お金をもらえやしないよ」
   でも、ディエロはへいきなかおで、
  「いいや、きっともらってくるよ」
   そういうと、そのあくる日、また森へ出かけていきました。
  「さあ、だんな、たんもののお金をもらいにきましたよ」
   石のほりもののまえへくると、ディエロはあいそよく声をかけましたが、いくらあいそがよくても、ほりものがへんじをするはずがありません。
  「なんだ、こら、へんじをしろ!」
   ディエロはおこって、道ばたの石ころをひろってなげつけました。
   すると、その石のほりものがこわれて、なんと中からピカピカひかる金貨が、ザラザラと出てきたではありませんか。
   でも、よくのないディエロは、
  「よしよし、はじめからお金を出してくれればいいんだ。では、たんもののお金をうけとるよ」
  と、たくさんの金貨の中から一まいだけをとって、うちへかえっていきました。
   さて数日後、このディエロのはなしが王さまの耳にはいりました。
  「ほう、そのディエロという若者は、なかなかのしょうじきものだな」
   そういって王さまは、ディエロをおしろへよびよせて、ほうびにたくさんのお金をくれたのです。
   ディエロがそのお金のふくろをかついで、うちへかえってきますと、
  「まあディエロ、おまえはたいした子だよ。ほんとうにえらいねえ」
  と、ようやくお母さんがほめてくれました。
おしまい