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8月17日の世界の昔話
  
  
  
  食いしん坊の女
  スペインの昔話 → スペインの国情報
 むかしむかし、あるところに、とても心のやさしい猟師(りょうし)がいました。
 猟師はウサギやウズラをとると、かならずそっくりそのまま家にもって帰りました。
 ところが猟師のおかみさんは、とても食いしんぼうで、えものを料理するとみんな一人で食べてしまいます。
  「肉は、ネコにとられちゃったのよ」
 いつもそういって、猟師には骨ばかりのスープしかあげませんでした。
 ある日猟師は、道で一人の魔女(まじょ)に声をかけられました。
  「気のどくに。あんたはおかみさんにだまされているよ。ほら、この三つぶのマメをあげるから、家の台所と、ろうかと、戸口に一つぶずつ、おいてごらん。きっと、肉の料理が食べられるようになるよ」
 そこで猟師は、マメをもらって家に帰ると、魔女にいわれたとおりにしました。
 何も知らないおかみさんが、ウズラを料理してから一人でコッソリ食べようとすると、
  ♪おかみさん
  ♪だんなさんには
  ♪あげないで
  ♪みんな一人で
  ♪食べちゃうよ
  ♪これがうそなら
  ♪ぼくは悪魔(あくま)に
  ♪さらわれてもいい
  と、台所のマメつぶが歌い出しました。
 おかみさんはビックリしてろうかへとび出すと、今度はそこで食べようとしました。
 すると、ろうかにおいてあったマメつぶが、また歌い出しました。
  ♪おかみさん
  ♪だんなさんには
  ♪あげないで
  ♪みんな一人で
  ♪食べちゃうよ
  ♪これがうそなら
  ♪ぼくは悪魔に
  ♪さらわれてもいい
 おかみさんは、身動きもできないほどおどろきましたが、何しろ食いしんぼうです。
  「かまうもんですか、戸口で食べましょう」
  と、いって、戸口のところへいきました。
 ところが戸口のマメが、また同じ歌を歌うではありませんか。
 さすがに食いしんぼうのおかみさんも、もうひと口も食べられなくなりました。
 しかたなく、肉をナベにもどしました。
   その日から猟師は、肉の入った料理を食べられるようになりました。
おしまい