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2009年 3月21日の新作昔話
一本のとうもろこし
広島県の民話 → 広島県情報
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日、おじいさんが家の前の畑にとうもろこしの種をまいてみました。
するとどういうわけか、たった一本だけが芽を出して、ずんずんのびていくのです。
やがてそれは成長して、とても大きな実がたくさんなりました。
「ありがたい。わしら二人が食べるには十分だ」
おじいさんとおばあさんが喜んでいると、サルが山からやってきて、せっかく実ったとうもろこしの実をみんなとっていってしまったのです。
「なんてひどいサルだ。とっちめてやろう」
怒ったおじいさんは、サルのあとを追って山へのぼっていきました。
すると山道の途中にお坊さんが一人座っていて、木づちをふりあげては、さかんに地面をたたいています。
(はて? 何をしているのかな?)
おじいさんが草むらにかくれて見ていると、なんとお坊さんの前に、山のような小判が現れました。
続いてお坊さんが、
「米出ろ!」
と、地面をたたいたら、地面から米がどんどんあふれ出てきました。
(これはすごい。わしにも、あんな木づちがあったらなあ)
おじいさんは、その木づちがほしくなりました。
そのうちに、お坊さんは木づちを放り出したまま横になって眠りはじめました。
(よし、ちょっと貸してもらおう)
おじいさんは草むらから出て木づちをひろうと、そのまま山をおりていきました。
家に帰ったおじいさんは、おばあさんにわけを話して、さっそく試してみました。
すると、どうでしょう。
この木づちでたたけば、小判でも米でも思い通りに出て来るのです。
おかげでおじいさんの家は、大金持ちになりました。
(あの貧乏な家が、どうしてお金持ちになったんだろう?)
となりの欲張りばあさんは、不思議でたまりません。
そこでわけを聞いたおばあさんは、
(なるほど、では、うちでもさっそくためしてみよう)
と、おばあさんはとうもろこしの種をかりてきて、畑にまきました。
するととうもろこしの芽がたくさん出たので、おばあさんはたった一本を残して、全部引き抜いてしまいました。
それでも一本の芽はずんずんのびて、あっというまに大きな実がなりました。
(あとはサルがとりにくるだけだ)
おばあさんが待っていると、さっそくサルがやってきて、とうもろこしの実をみんなとっていきました。
(よしよし、うまくいったよ)
おばあさんはすぐにサルのあとを追って、山へ行きました。
山の途中までくると、お坊さんが一人草の上に座っていました。
(いたいた。あのお坊さんだな)
おばあさんは、いきなりお坊さんの前に飛び出して、
「木づち、木づち。はやく木づちをおよこし」
と、言いました。
そのとたん、お坊さんは怖い顔で立ちあがり、
「この間の木づちをとったのは、お前だな!」
と、言うなりつえをふりあげて、おばあさんを殴りつけました。
頭をこぶだらけにしたおばあさんは、泣きながら山をおりていきました。
おしまい
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