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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > あまいあめのあめ
2009年 12月14日の新作昔話
あまいあめのあめ
インドの昔話 → インドの情報
むかしむかし、インドのある村に、ラクシュミとラーマという姉弟が住んでいました。
姉のラクシュミは十二歳で、弟のラーマは八歳です。
かわいそうな事に、姉弟のお父さんもお母さんも病気で死んでしまい、二人に残されたのは庭のある家と、ほんの少しのお金だけです。
ラクシュミは村の家々のお手伝いをして、わずかなお金をもらうことにしたのですが、それだけでは、その日の食べ物を買うだけでお金は無くなってしまいます。
そこである日の事、ラクシュミは弟のラーマに言いました。
「ねえ、ラーマ。これからは庭に野菜をつくって、市場に売りに行きましよう。お母さんが言っていたわ、この家の土地は とってもいい土だって」
すると弟は、こう答えました。
「いいけど、おやつにアメを買っておくれよ」
そこで姉は家にあるお金をかき集めると、市場へ行って野菜の種とアメを買って来ました。
そして二人は、庭を耕し始めました。
でも、小さな庭でしたから、子どもでもそんなに時間はかかりません。
もう少しで、耕し終わる時、
カキン!
と、クワに何か固い物が当たった様な音がしました。
「何だろう?」
二人が掘ってみると、土の中から金属のつぼが現れました。
つぼのふたを開けてみると、金貨や宝石がたくさん入っているではありませんか。
「すごい・・・」
姉は驚きの余り、それ以上の言葉が出ません。
これだけあれば、一生、食べるには困らないでしょう。
弟は大喜びで駆け出しながら、言いました。
「すごいよ! ぼくたちは大金持ちだ! さっそく、みんなに自慢しなくちゃ!」
「・・・えっ? あっ、言いふらしては駄目よ!」
弟の言葉に我にかえった姉は、あわてて弟を止めようとしましたが、もう弟の姿はありません。
「大変だわ! ラーマの事だから、村中に宝物の事をしゃべってしまう。そうしたら欲張りな大人たちがやって来て、この宝物を横取りしてしまうかもしれない。どうしよう? ・・・そうだわ」
かしこい姉は急いでつぼを取り出すと、だれにも見つからない場所に隠しました。
そして、つぼがあった穴を埋めて平らにすると、そこに野菜の種をまいて水をやりました。
それから買ってきたアメを鍋に入れて、水と一緒に煮溶かしました。
さて、しばらくして戻ってきた弟は、村中を走り回って疲れたのか、庭のマンゴーの木の下のベッドで、たちまち寝てしまいました。
姉は溶かしたアメをおわんに入れてマンゴーの木に登ると、上からパラパラと振りまきました。
溶けたアメは太陽の光にキラキラと輝きながら、弟のまわりに降り注ぎます。
アメをまき終えた姉は、木から下りると弟に言いました。
「ラーマ、ラーマ、起きてよ。空からアメの雨が降ってきたのよ」
「えっ?!」
弟はびっくりして目を覚ますと、手に付いたアメをなめながら言いました。
「本当だ。この雨、とっても甘いや」
うれしそうに手をなめる弟に、姉は言いました。
「さあ、アメの雨でべたべただから、はやく水浴びをしていらっしゃい」
「はーい」
そして弟が水浴びに出かけたすきに、姉は降らしたアメの雨をきれいに拭き取りました。
ちょうどその時、大勢の村人たちが二人の家にやってきたのです。
(何とか、間にあったわね)
姉は何食わぬ顔で、村人たちを出迎えました。
「あら? みなさんおそろいで、どうしたのですか?」
すると村人たちは、口々に言いました。
「宝が出たんだってな。出てきた宝を見せてくれよ」
「かわいいラクシュミ、ラーマ。わたしはあんたたちの遠い親戚だよ。だから宝物をわけておくれ」
「その宝は、おれが以前に埋めた物だ。早く返してくれ!」
「宝は王さまの物だ。ネコババすると、死刑だぞ」
村人たちは、自分勝手な事を言い出します。
でも姉は慌てることなく、不思議そうな顔で言いました。
「まあ、うちのラーマが宝が出たと言ったのですか? みなさんも、あわてんぼうですね。ラーマがどんなにおしゃべりで、ある事ない事、何でも言いふらすのはご存じでしょう」
ちょうどそこへ、水浴びを終えた弟がやってきたので、姉は弟に言いました。
「ラーマ、今日、何があったのか、お姉ちゃんに話してごらんなさい」
すると弟は、得意になって言いました。
「うん。今日、ぼくとお姉ちゃんが畑を耕していたら、ものすごい宝物が出てきたんだよ」
「それから?」
「うん。それから、さっきお昼寝をしていたら、空からアメの雨が降ってきたんだ。とっても甘かったよ」
それを聞いた村人は、弟に尋ねました。
「空から、アメの雨が降ってきたって?!」
「うん、そうだよ。甘いアメの雨が空から降ってきたんだ」
それを聞いたみんなは、ゲラゲラと笑い出しました。
「あははははっ。ラクシュミの言う通り、おれたちはあわてんぼうだったよ」
「そうねえ、まさかこんなところに、宝物があるわけがないものね」
「馬鹿馬鹿しい。帰ろう、帰ろう」
そう言って、村人たちは帰って行きました。
その後、姉は隠しておいた宝を村人が怪しまない程度に少しずつ取り出して使い、二人とも末永く幸せに暮らしたということです。
おしまい
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