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2010年 4月14日の新作昔話
川に落ちた下駄
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
ある小川での事、子どもたちが集まって何やら騒いでいます。
「はやく、取って」
「待ってなよ。・・・あっ、もう手が届かない」
「はやくはやく、向こう側に行ってしまうよ」
「よし、それなら棒で」
どうやら、女の子があやまってげたを片一方を、小川に落としてしまったようで、それを一緒に遊んでいた男の子たちは、拾おうとしている様子です。
しかし、小川の流れはゆるやかなものの、子どもたちはあわてているので、げたはかえって岸から遠くへ行ってしまいました。
これでは、いくら長い棒があっても届きません。
「仕方ない、あきらめようか?」
「うわーーん」
女の子は、とうとう泣き出してしまいました。
この時、仕事帰りで近くを歩いていたきっちょむさんが、女の子の泣き声を聞きつけてやってきたのです。
「やっ、げたを落としたのか。よし、待ってな」
きっちょむさんは、落ちていた石を拾うと、それをげたの向こう側にドブンと投げ込みました。
するとげたは波に押されて、ゆらりゆらりと、少しこちらに近づきました。
「さあ、お前たちも、げたの向こう側に石を投げるんだ」
こうして子どもたちも加わって、げたの向こう側に石を投げ続けると、げたはどんどん波に押されて近づいてきて、ついには手の届くところにやって来ました。
こうしてげたを拾い上げたきっちょむさんは、そのげたを自分の着物でていねいに拭いてやると、にっこり微笑む女の子に渡してやったのでした。
おしまい
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