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2012年 4月11日の新作昔話
こんにゃく問答
山口県の民話 → 山口県の情報
むかしむかし、山奥に、ふうくう寺という禅寺がありました。
ふうくう寺の山門の下には一軒のこんにゃく屋があって、ふうくう寺の和尚さんとこんにゃく屋のおやじさんは、大の仲良しでした。
ある日、都の大本山からふうくう寺に便りが届きました。
便りの内容は、
《本山の大和尚さんが問答かけにやって来る、そしてそれに応じられなかったら、ふうくう寺の和尚さんには寺を出てもらうかもしれぬ》
と、いうものでした。
あまり頭の良くないふうくう寺の和尚さんは、すっかり困ってしまいました。
そこで和尚さんは、仲良しのこんにゃく屋に身代わりを頼んだのです。
そこで二人は着物を取りかえて、和尚さんはこんにゃく屋へ、おやじさんはふうくう寺へ行きました。
やがて本山から大和尚さんが到着し、さっそく問答かけが始まりました。
まず、大和尚さんが、
「これいかに」
と、指で丸い輪を作って見せました。
するとおやじさんは、手を広げて答えました。
次に大和尚さんが両手を広げると、おやじさんは片手の指五本を広げて突き出して、最後に大和尚さんが指を三本突き出すと、おやじさんは赤んべえをしてみせました。
大和尚さんはおやじさんに深く一礼すると、満足そうに立ち去りました。
そして大和尚さんは、ふもとのこんにゃく屋に立ち寄ると、
「ふうくう寺の和尚さんは、実に偉いお方じゃ。わしが『日月(にちげつ)は』と尋ねると『大海のごとし』、『十方世界は』ときくと『五戒(ごかい)をたもつ』、そして『三界(さんかい)は』という問いかけには赤んべえをして『目の下にあり』と答えなさった」
と、ほめちぎったのです。
驚いた和尚さんは、
「お前、いつからそう偉くなったんじゃ」
と、おやじさんに尋ねました。
するとおやじは、
「さすがに大和尚さんじゃ、わしが本当はこんにゃく屋だということを知っていて、指でこんにゃく玉の形をつくって、『どうやって、こんにゃくを作るのか?』と聞かれたので、わしは手を広げて、こんにゃくを作る様子をしてみせた。次に両手を広げて『お前のところのこんにゃくは十文か』と聞かれたので、片手で『五文ですわい』と答え、最後に指三本出して三文に負けろといわれたので、そんなことできるもんかと、赤んべえをして見せたのじゃ」
と、言ったそうです。
おしまい
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