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福娘童話集 > きょうの新作昔話>足跡隠しの雪 弘法大師話

2014年 6月 6日の新作昔話
足跡隠しの雪

足跡隠しの雪
中国に伝わる弘法大師話中国の情報

 麦という植物は、弘法大師が中国から日本に伝えたと言われています。
 これは、それにまつわるお話です。

 むかし、唐の国(とうのくに→中国)に留学していた大師が、日本にはない麦という穀物を見て思いました。
「この麦と言うのは、なんとも素晴らしい穀物だ。
 この麦は、やせた土地でも育ち、米の出来ない冬でも育てる事が出来る。
 これはきっと、日本の役に立つだろう」
 そして大師は、中国の農民に麦を売ってくれるように頼みました。
 しかし中国の農民は日本という小さな島国から来た大師を馬鹿にして、麦を日本に持ち帰らないのであれば、今持っている有り金全てで、一つかみの麦を売ってやろうと言ったのです。
「日本へ持ち帰れないのであれば、意味がない」
 大師はそう言って一度はあきらめましたが、しばらくすると農民のところへ引き返して、一つかみの麦を有り金全て買いました。
 そして大師は自分の足のすねを刃物で切り裂くと、
「たとえ仏の罰を受けることになろうとも、日本の役に立つのなら」
と、 その傷口に麦を詰め込んで、麦を日本へ持って帰ろうとしたのです。
 しかし足が痛くてうまく歩けないので、大師の歩いた跡には足を引きずった足跡が残りました。
 このおかしな足跡は麦畑からずっと続いているので、このままでは大師が麦を隠し持っている事がばれてしまいます。
「仕方ない。見つかるも見つからないも、仏にお任せしよう」
 するとそのとき、雲一つ無かった青空が急に曇り、大師の足跡を隠すように大雪が降ったのです。
 この大雪のおかげで、大師は麦を無事に日本へ伝えることが出来たのです。

 その日は旧暦の十一月十四日で、今でもこの時期になると中国のその地方では、毎年の様に大雪が降ると言われています。

おしまい

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