百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第186話

おぶさりてえ

おぶさりてえ
岐阜県の民話岐阜県情報

 むかしむかし、八幡(やはた)さまの奥の院にある高い高い杉の木のてっぺんに、バケモノがすんでいました。
 そのバケモノは、毎日ひぐれになると、
「おぶさりてえー、おぶさりてえー」
と、さけぴ、木の下をとおる人がいると、木をスルスルとおりてきて、
「おぶさりてえー、おぶさりてえー」
と、追いかけてくるのです。
 こんなわけで、夜になるとだれ一人、八幡さまのあたりをとおる者はいませんでした。
 さて、ある晩の事。
 (さむらい)が三人あつまって茶のみ話をしていると、一人の侍がいいだしました。
「どうじゃ。われら三人で碁(ご)をうって、負けたものはバケモノをおぶってくる事にしようではないか」
「うん、それはおもしろかろう」
「さんせい」
 そこで三人は、さっそく碁をうちはじめました。
 ところがなんと、負けたのは三人の中で一番こわがりの侍でした。
 弱虫の侍は、しょんぼりと自分の家にかえって、嫁さんに別れのあいさつをしました。
「これで、お前の顔も見おさめじゃ。わしはもう、生きてはかえれんかもしれん。お前も体に気をつけてくらせよ」
 そう言って、八幡さまへでかけていきました。
 最初の鳥居(とりい)をくぐり、次に二の鳥居(とりい)、三の鳥居と進んでいきましたが、体がブルブルとふるえてしまい、今にも気絶してしまいそうです。
 それをどうにかがまんして、なんとか八幡さまの拝殿(はいでん)までたどりつきました。
 ガラン、ガラン、ガラン
 鈴のひもをひくと、
「どうぞ八幡さま。ぶじで約束がはたせますように。バケモノをおぶってかえれますように」
と、両手をあわせながら、いっしんにおがみました。
 さて、おそろしいのはこれからで、奥の院までいかなくてはなりません。
 弱虫の侍は、もう死んだ気で走り出しました。
 奥の院の杉の木の下までくると、高い杉の木のてっぺんを見あげて、思いっきりわめきました。
「やいバケモノ! おぶさりてえなら、さあ、このおれにおぶされい!」
 すると上の暗やみから、ガリガリッと、つめで木の幹(みき)をひっかきながら、何かが降りてきました。
 そして侍の背中に、ズッシリとおぶさったのです。
 その重たい事といったら、いまにも腰がおれてしまいそうです。
 でも弱虫の侍は、死にものぐるいでふらつく足をふんばり、なんとか家までたどり着きました。
「そら、ここへ降りろ」
 玄関(げんかん)の土間(どま)に降ろそうとしましたが、バケモノはしっかりとしがみついて、降りようとはしません。
 弱虫の侍はしかたなく、茶の間にあがって、
「さあ、ここへ降りろ」
と、いいましたが、ここでも降りてくれません。
 それで今度は奥の座敷に入って、床の間のほうへ背中をむけると、
「そんなら、お前。ここへ降りろ」
と、いうと、今度はあっさりと降りてくれました。
 さあ、降ろしたのはいいのですが、弱虫の侍はそのバケモノを見る勇気もなく、そのままとなりの部屋へかけこんで、ふとんを頭からかぶって一晩中、ブルブルとふるえていました。
 さて、あくる朝です。
 嫁さんが座敷のそうじにいって、おどろいた声をあげました。
「お前さん、お前さん。大変だよ」
 朝になっても、まだふとんの中でブルブルとふるえていた弱虫の侍は、嫁さんに引っ張られるように座敷に連れて行かれました。
「お前さん、何をふるえながら目をつぶっているんだい。はやくこれを見てごらん」
 嫁さんにいわれて、弱虫の侍がおそるおそる目を開けてみると、昨日おぶってきたバケモノはおらず、そのかわりに大判小判の入った大きなツボが、座敷の真ん中においてあったという事です。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界