福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)
百物語 第190話
カッパのわび証文
山形県の民話 → 山形県情報
むかしむかし、最上川(もがみがわ→山形県)のほとりに庄屋(しょうや)の家があり、一人のきれいな娘さんがいました。
一人娘だったので、庄屋さんは目に入れてもいたくないほど可愛がっていたのですが、最近は何となく元気がなくなり、顔色も青ざめてきたのです。
医者に見せても病気ではないというし、娘にどこか具合が悪いかときいても首を横に振るだけです。
こまった庄屋さんは、町の巫女(みこ)に娘の事をみてもらいました。
すると巫女は、
「これは、カッパに見こまれて術をかけられているのでしょう。えらい坊さまなら、道切り(みちきり)の呪文(じゅもん)でカッパをつかまえられるでしょう」
と、いうので、庄屋さんは村に飛んで帰り、古いお寺のえらい和尚(おしょう)さんに道切りの呪文を頼みました。
和尚さんは、
「カッパが人間の女に心を寄せるなど、とんでもない事だ。こらしめてやりましょう」
と、さっそくカッパのいる川で道切りの呪文をとなえ始めると、川の水がみるみるへりはじめたのです。
そして和尚さんは、大声でさけびました。
「庄屋の娘の術を解き、二度と人間に悪さをしてはならぬ。明日の朝までに約束する証文(しょうもん)を持ってこないときは、川の水をからしてしまうぞ!」
すると川の底から、苦しそうな声が聞こえてきました。
「悪かった。明日の朝まで待ってくれ」
その日からカッパにかけられた娘の術がとけて、元気な美しい娘にもどりました。
次の朝、和尚さんが山門に出てみると、一巻のカッパのわび証文がおいてあったそうです。
今も高畠町糠野目(たかはたちょうぬかのめ)のある寺には、このカッパのわび証文が残されているという事です。
おしまい
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