百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第197話

だきついてくる白骨

だきついてくる白骨
岐阜県の民話岐阜県情報

 むかしむかし、美濃の国(みののくに→岐阜県)に、長間佐太(ながまのさた)という武士(ぶし)がいました。
 将軍を守るため京の都へ行ったのですが、戦(いくさ)のおわったあと、つくづく武士がいやになりました。
(人と人が争うとは、なんとおろかな事だろう。もはや二度と武器は手にしたくない)
 そう心にきめた佐太(さた)は、国へはもどらずに武士の身分をすてると、草ぶきの小屋をたてて、たった一人で住む事にしたのです。
 だからといって、元武士が乞食(こじき)をするわけにもいかず、近くの山でしばを買い求めて、それを町へ売りに行って暮らす事にしました。
 まずしい暮らしでしたが、佐太には心の休まる毎日でした。
 わずかなお金で安物の酒を買い、心ゆくまで山をながめ、月を見ては歌をよむ。
 ときには町の寺へ行って庭を掃除し、日が暮れればお堂の下でねむり、夜が明ければしばを売って歩く。
 あまりにもひどい生活に、むかしの仲間が金と食べ物を佐太にあげようとしても、
「寝るところも食べるものもその日まかせ、何もないほうがよほど気らくだ」
と、いって、受けとろうとしません。
 そんな佐太がある晩、墓地の近くを歩いていたら、目の前の古い墓がいきなり二つにわれて、中からたいまつのような明かりがもれてきたのです。
 ビックリしましたが、佐太はもともと、すご腕の武士です。
 顔色も変えずに、
「はて、何事だ?」
と、墓の中をのぞいてみたら、白骨(はっこつ→ガイコツ)になった人間がムクリと起きあがり、佐太にだきついてきたのです。
「拙者(せっしゃに)に、何か用か?」
と、たずねてみても、白骨はだまったまま、佐太を墓の中へ引きずりこもうとします。
「いかに世捨て人とて、まだ死ぬわけにはいかぬ」
 佐太が力まかせにつきとばすと、白骨はあっけなくあおむけにたおれて、たおれたはずみに骨がバラバラになってしまいました。
 それと同時に明かりが消えて、あたりはふたたびまっくらです。
 しかたなくその場をはなれた佐太は、ゆうべの出来事が気になり、翌朝ふたたびもどってみると、墓はくずれて白骨がちらばっていました。
「拙者にまでだきつくとは、よほどくやしいことがあったにちがいない」
 佐太はちらばった白骨を拾い集めて墓にもどすと、どこへともなく歩いていったという事です。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界