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福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)
百物語 第317話
鬼を退治した男の子
鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報
むかしむかし、ある村はずれの山の上に、鬼が住んでいました。
とても恐ろしい鬼で、夜になると村へ来ては食べ物をとったり、家を壊したりしました。
「何とか、鬼を退治する方法はないものだろうか?」
村人たちは顔を合わせるたびに相談しましたが、なかなかいい知恵が出ません。
今までにも何度か、村の若者たちが集まって鬼退治に出かけたのですが、いつも負けてしまいます。
このままでは、村が滅んでしまうでしょう。
さて、この村には、とてもりこうな男の子がいました。
男の子もなんとか鬼を退治しようと思い、鬼の一番怖がる物を考えてみました。
(まずは、豆だな。
節分の豆まきは鬼を追い払うからな。
それに、イワシの頭だ。
鬼はイワシのにおいが嫌いだから、節分の時に鬼が来ないように家の入口にさすと、ばあちゃんがいっていたな。
うーん、・・・それからニワトリの声も嫌いだ。
ばあちゃんに聞いた『こぶとりじいさん』の話しでは、鬼はニワトリの声を聞いて逃げ出したはず。
よし、豆とイワシの頭とニワトリの声だ。
これでおいらが、鬼を退治してやる)
そこで男の子は、村人たちに、
「おいら 一人で鬼を退治してくる!」
と、言いました。
それを聞いた村人たちは、びっくりするよりもあきれ顔で、
「あはははは。若い者でもやられるのに、子どもなんかに鬼退治が出来るわけないだろう」
と、相手にしてくれません。
「ふん、見ていろよ!」
男の子はふところにニワトリを入れ、イワシの頭と豆を持って山へのぼって行きました。
さて、山の上には立派な鬼の家がありました。
男の子が中をのぞいてみると鬼は出かけているらしく、中にはだれもいません。
「しめしめ、今のうちだ」
男の子は家の中へ入ると、天井裏に隠れました。
やがて夕方になって、鬼が帰ってきました。
鬼はいろりに火をおこして、村から奪ってきた酒を飲んでいます。
男の子が息を殺して、天井裏からじっと様子を見ていると、
「ああ、まだ飲み足りねえ。また村へ行ってひと暴れしてくるか」
と、言いながら、鬼が立ちあがりました。
その時です。
「コケコッコー!」
男の子の持ってきたニワトリが、はげしく鳴きました。
鬼は、びっくりです。
「うひゃー! ニワトリだー!」
慌てて逃げ出そうとして、いろりの中へ足をつっこみました。
「あちっ! あち、あち!」
鬼がやけどをした片足を抱えながらピョンピョンと飛び跳ねていると、男の子は天井裏から鬼めがけてイワシの頭を投げつけました。
突然目の前に現れたイワシの頭に、鬼は叫び声を上げました。
「うひゃー! イワシの頭だー!」
苦手なイワシにびっくりした鬼は、部屋の中をドタバタと逃げ回ります。
「これで最後だ! くらえ!」
それから男のは、天井裏から鬼めがけて、豆を力一杯投げつけました。
「うひゃー! 豆だー! たっ、助けてくれえー!」
鬼はあわてて家から飛び出そうとしたとたん、入口においてあった大きな石うすに頭をぶつけて、死んでしまいました。
「やったー! 鬼をやっつけたぞー!」
見事に鬼を退治した男の子は、鬼の宝物をかつぐと、元気よく村へ帰って行きました。
おしまい
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