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百物語 第334話
じゃあじゃ山の大蛇
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むかしむかし、じゃあじゃ山というところに、大きな大蛇がいました。
それを見ると、おそろしいたたりがあるというので、だれもが怖がって山へ行きません。
そこへ力自慢の、じん太という若者が現れて、
「大蛇なんぞ、おらが退治してやる」
と、一人で山へ行ったのです。
そして山へ出かけたじん太は、山で一仕事をすると、大胆にも大の字になってグーグーと昼寝を始めました。
しばらくたって、じん太がふと目を覚ますと、なんとじん太が昼寝をしていたすぐ横で、木よりも太い大蛇が、
「ヒュー、ヒュー」
と、いびきかいて眠っていたのです。
さすがのじん太も腰を抜かすほどびっくりしましたが、いつも力自慢をしているので、逃げるわけにはいきません。
そこで気を取り直して大蛇に近づくと、持っていたくわで大蛇の頭を、
ガツン!
と、殴りつけたのです。
いい気持ちで昼寝をしていた大蛇は、びっくりしてはね起きると、まっ赤な口を大きく開いて、じん太に噛みつこうとしました。
けれどじん太は、その大蛇の頭を何度も何度も叩いて、ついに大蛇を倒したのです。
「大蛇を退治するなんて、大したものだ」
村人は感心して、じん太をほめましたが、大蛇のたたりがあると恐いので、やっぱり山にはだれも近づきません。
ある日の事、じん太のところに大女がやって来ました。
「突然で失礼ですが、わたしは、亭主を殺された仇が討ちたいのです。何でもお前さんは大変な力持ちで、すもうが強いそうじゃが、仇討ちのために、ひとつ教えてくれませんか」
と、何度も何度も頭を下げるので、じん太はその大女と、すもうをすることになりました。
「はっけよい。のこった!」
大女はじん太と組み合ったとたん、口から蛇のような細長い舌をペロペロと出していいました。
「ああ、これでやっと、亭主の仇が討てる」
その言葉に、じん太がびっくりしていると、大女は大蛇に変身して、太い胴体でじん太の体をギリギリと締め付けました。
そのすごい力に、じん太の体中の骨がミシミシと音をたてます。
「うわぁー! お前はあの大蛇の嫁さんか!」
じん太は近くにあったてんびん棒をつかむと、無我夢中で大蛇の頭を殴りつけました。
そして何度も何度も殴りつけて、ついに大蛇の嫁さんも殴り殺したのです。
この日から山に入っても、大蛇が現れることはありませんでしたが、じん太はその時のケガがもとで、何日も何日も苦しんだ末に死んでしまったのです。
おしまい
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