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10月29日の日本の昔話
しずが浦のタヌキ
山口県の民話 → 山口県情報
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制作: ユメの本棚
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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
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投稿者 「天乃悠の朗読アート」 天乃悠の朗読アート
むかしむかし、青海島(おうみしま)というところに、一人の漁師が八歳になる娘と二人で暮らしていました。
娘の名前は『おしず』で、とても心やさしい娘です。
ある日の事、この島に来た猟師が子ダヌキを生け捕りにしました。
猟師はお昼ご飯に、その子ダヌキをタヌキ汁にしようと考えました。
するとこれを見たおしずが子ダヌキを可愛そうに思って、父親にせがんで子ダヌキを買い取ってもらったのです。
おしずは子ダヌキを裏山に連れて行くと、逃がしてやりました。
「もう、人間に捕まったら駄目だよ」
おしずのおかげで命拾いをした子ダヌキは、何度も何度も頭を下げて山奥へと帰って行きました。
さて、それから十年後。
戦に破れて傷を負った一人の若い落武者が、この島に逃れて来ました。
それを見つけたおしずが親身になって看護した為、やがて落ち武者の若者は元気になり、それが縁で二人は夫婦になったのです。
ですが、やがて落ち武者狩りが始まり、追手がこの島までやって来たのです。
そこで父親は二人を舟に乗せると、こっそりと九州へ逃がしてやりました。
二人がいなくなり一人ぼっちになった父親は、とてもさびしい毎日を送りました。
そんなある寒い夜の事、父親が家に帰ってみると、不思議な事に家の中は灯りがともり、ろばたの火が温かく燃えていたのです。
「おや? 一体誰が?」
父親が家の中を見てみると、なんとそこには十年前の子ダヌキだったあのタヌキが、父親の大好きなどぶろくを持って座っていたのです。
父親がさびしい毎日を送っている事を知ったタヌキが、父親をなぐさめようとやって来たのでした。
それからタヌキは、毎日どぶろくを持って父親の家にやって来ました。
しばらくしたある日、九州へ行ったおしず夫婦が、父親を迎えに島へ帰って来ました。
「お父さん、九州で新しい家を見つけました。そこで一緒に暮らしましょう」
そして満月の晩、三人は舟に乗って九州へ行く事にしました。
その時、あのタヌキが裏山に駆け上り、三人を見送りながら腹包みを打ち鳴らしたのです。
♪ポンポコポン
♪ポンポコポン
♪ポンポコポンのポンポン
それ以来、タヌキは満月になると九州へ行った三人を思い出すのか、三人が舟で旅立った浜には満月になるとタヌキの腹包みが鳴りひびいたそうです。
人々はその浜をおしずの名前を取って、『しずが浦』と呼ぶ様になりました。
おしまい
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