ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >ひゃくものがたり(百物语) >一月
けものつき
兽类之怪
(日本昔話)
(日本民间故事)
翻訳者 信陽師範学院 明雪丽
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、ある町奉行(まちぶぎょう)に、新田左近(にったさこん)という人が勤めていました。
很久很久以前,有一位叫做新田左近的人在町奉行工作。
夏の暑い日の事、左近は筆記や計算などの仕事をしていましたが、
这是发生在一个炎热的夏天的故事,左近在做着笔记或者计算之类的工作,
朝から一日中働きづめだったので、すっかり疲れ果ててしまいました。
因为从早上开始整天就一直在工作,到最后感觉到非常的疲惫。
(どうも、気分がすぐれぬ。だが、がんばってもう一仕事せねば)
(真烦啊。可是,又不得不努力完成工作哎)
夕方になり、仕事の終わった左近はやっとの思いで家に帰りました。
到了傍晚,直到工作终于结束左近才这样想着然后回家了。
「やれやれ、今日はひどくくたびれた。茶でも飲んで一休みをしよう」
「哎呀,今天感觉太累了。喝杯茶什么的暂时休息一下吧」
そして家に入ってふと妻の顔を見ると、何と妻の顔が牛の顔だったのです。
然后左近回到了家里突然看见了妻子的脸庞,总觉得妻子的脸看起来像是牛的样子。
(おのれ、妖怪めっ!)
(你这家伙、是妖怪吧!)
左近は思わず、刀のつかに手をかけましたが、
左近不由得这样想着,把刀柄拿在了手里。
(待てよ)
(等等)
と、今度は妻の隣にいる、女中の顔を見ました。
这一次因为在妻子的旁边,所以也看见了女佣人的脸。
すると女中も人間ではなく、赤馬の顔をしていました。
这么说来女佣人也不是人类,而是长着一张红色的马脸。
そして子どもたちの顔を見ると、こちらは鬼の顔です。
然后又看见了孩子们的脸,也全都是鬼脸。
家の者全員が、人間の顔ではありません。
家里的所有人,全部都不是人类的脸。
(これは、ただ事ではない)
(这,这件事可非同小可啊)
我にかえった左近は、刀をにぎりしめていた手を放しました。
神智清醒过来的左近,把手放在刀上紧紧的攥紧着。
(こんな時こそ、落ち着かねば。
(正是这样的时候,如果不冷静,
下手をすると、武士の名を恥ずかしめる事になる。
搞不好的话,会令武士之名蒙受耻辱的。
冷静に、冷静に、冷静に、冷静に・・・)
冷静、冷静、冷静、冷静……)
左近は奥の間に入ると、ふすまをぴったりと閉めて座禅をし、静かに目を閉じました。
左近进到妻子的中间,把隔扇紧紧地关起来开始打坐,静静地闭着眼睛。
さて、主人の様子がおかしいのに気づいた妻は、心配になって左近に声をかけました。
然后,感觉到丈夫的样子有点奇怪的妻子,担心的向丈夫打招呼。
「あの、ご気分でも、お悪いのですか?」
「那个,您的心情不好吗?」
左近が薄目を開けて妻の顔を見ると、やはり牛の顔です。
左近眯着眼睛看着妻子的脸,果然还是牛的脸。
「何でもない。向こうへ、行っていろ!」
「没什么。到那边去吧,快去!」
左近は、しかるように言って妻を追い出すと、それから一時間ほど心を落ち着かせて、ゆっくりと立ち上がると奥の居間から出ました。
左近十分生气的把妻子赶了出去,在之后的差不多一个小时的时间里情绪慢慢稳定,慢慢的恢复起来然后从妻子的起居室里出去了。
そして恐る恐る家の者の顔を見てみましたが、どの顔も普段通りで少しも変わった所はありません。
然后提心吊胆的看着家人的脸,不论是谁的脸都和往常一样一点也没有改变的地方。
「・・・・・・」
「……」
その夜、左近は妻にしみじみと言いました。
那个夜晚,佐近感慨的对妻子说道。
「先ほどは、声を荒げてすまなかった。
「刚才,对你大声的呵斥了,这是对不起。
今日は暑いうえに、何かと忙しい仕事でくたびれ果てた。
今天不仅很热,而且各个方面的工作都很忙感觉到精疲力竭。
それで家の者の顔が、けものや鬼に見えたのであろう。
于是看到家里人的脸,都感觉像是兽类和鬼一样的。
まったく、刀を抜かなくてよかったわい」
真的是,没有拔刀真的是太好了。」
むかしはこの様な症状を、『けものつき』と呼んでいました。
在以前的时候这样的症状被叫做『兽类之怪』。
この左近の様に落ち着いた対応をすればよいのですが、びっくりした人が家族を斬り殺すという事がたびたびあったそうです。
像这个佐近先生一样沉着应对的话就好了,但是也屡屡多次有因为吓了一跳而把全家都斩杀的事情发生。
おしまい
完结
(回到上一页)
|