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12月25日の日本民話
かみなりの子
愛知県の民話 → 愛知県情報
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むかしむかし、お百姓さんが田んぼの水の流れを見て歩いていると、とつぜん空がまっ暗になりました。
「こりゃ、ひと雨くるぞ」
あわてて木の下に逃げると、ザーッザーッといきおいよく雨が降って来ました。
そして今度は急にあたりがまぶしく光ったかと思うと、ドーンと地面がわれるような音がしたのです。
おどろいたお百姓さんは、その場に頭をかかえてうずくまりました。
しかし雨が急にやんで静かになったので、お百姓さんはそっと顔をあげました。
見ると赤い体で髪の毛がクルクルの大男が、目を回して倒れています。
「こりゃー、かみなりさんだな。きっと雲の上から、落っこちたんだろう」
お百姓さんは、かみなりの体をゆすって起こしました。
するとかみなりは気がついて、その場にきちんと正座をするとはずかしそうに言いました。
「うっかり、雲から足をすべらせてしまいました。ほんとうに、ごめいわくをおかけしました」
「いや、あやまらんでもええが、それよりどうやって帰るのかね?」
「はい。くすの木で舟を作り、その舟に水を入れて小さな竹の葉を一枚浮かべれば、わたしは空へ帰れます」
「そうか、なら手伝ってやる」
お百姓さんとかみなりはくすの木の舟を作ると、かみなりが舟に水を入れて竹の葉でくるくるとまわしながら言いました。
「ありがとうございます。お礼に願い事を、一つかなえてさしあげましょう」
「それは、ありがたい。では、子どもをさずけてくださらんか」
「子どもですね。約束しましょう」
かみなりはにっこり笑うと、くすの木の小さな舟に乗って空へ帰って行きました。
それから半年後、お百姓さんの家に男の赤ちゃんが生まれました。
かわいい顔をした赤ちゃんですが、不思議な事に赤ちゃんは首に虹色のヘビをまきつけて生まれてきたのです。
みんなは気味悪いから取ってしまおうと言いましたが、お百姓さんは、
「この子は、かみなりさんがくださった子だ。きっとヘビが巻きついているのも、何か理由があるにちがいない。このまま育てよう」
と、そのまま子どもを大切に育てました。
男の子はすくすくと大きくなり、そのうちに首にまきついたヘビもいなくなりました。
男の子はとても力が強く、十歳をこえる頃には村で一番の力持ちになりました。
さて、十三歳になった子どもに勉強をさせようと、お百姓さん夫婦は元興寺(げんこうじ)というお寺の和尚さんのところへ子どもを連れて行きました。
和尚さんは、力持ちで元気で明るい男の子をとても気に入りました。
男の子はよく勉強をして、よく働きました。
ある時、男の子が和尚さんにたずねました。
「和尚さま、なぜこのお寺は鐘をつかないのですか? 立派な鐘があるというのに」
「それはな、この寺の鐘をつくと怖い鬼が出て来るからじゃ。今までに鐘をつきに出た小僧が何人も耳をちぎられたり、腕を折られたりしたのじゃ」
「それなら今夜、私にやらせてください」
「なにを言っておる! あれは、恐ろしい鬼じゃぞ」
でも男の子が何度も頼むので、根負けした和尚さんは鐘つきを許しました。、
「だが、もし鬼が出てきたら、すぐに逃げるのじゃよ」
さて夜になると、男の子は鐘をつきに出ました。
♪ゴーン、ゴーン
素晴らしい鐘の音が、村中に響きます。
するといきなり、男の子は大きな手で頭をつかまれました。
鐘の音を聞いて、いつの間にか鬼がやって来たのです。
しかし男の子は、その鬼の手をつかんで鬼を投げ飛ばしました。
ドシーン!
生まれて初めて投げられた鬼は、びっくりです。
「このわしが、人間の子どもに投げられるとは」
男の子はそのすきに鬼に飛びかかると、鬼の頭の角をしっかりとにぎって言いました。
「やい、お前が悪い鬼だな!」
「こらっ、大事な角をつかむな! 離せ!」
「離すもんか〜!」
鬼は角にしがみつく男の子を引き離そうとしますが、男の子の力が強くてどうやっても引き離せません。
するとそのうちに、
ボキッ!
と、鬼の角が折れてしまいました。
「ウギャーーー!」
鬼はひめいを上げると、どこかへ逃げてしまいました。
さて、その悲鳴を聞きつけた和尚さんがあわててやって来ると、男の子は手に持った鬼の角を見せて言いました。
「悪い鬼は、わたしがこらしめました。もう二度と、やって来ないでしょう」
それから元興寺では鐘をついても、鬼は二度とやって来ませんでした。
おしまい
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