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      第 1話 
          
          
         
島女(しまじょ)の祠(ほこら) 
長崎県の民話 → 長崎県情報 
 
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       むかしむかし、石田(いしだ)のお城には、島女(しまじょ)という御殿女中(ごてんじょちゅう)がいました。 
 気立てがよく、みんなの嫌がる仕事でもすすんでやるので、城の者や女中仲間からも大変可愛がられていました。 
 ある日の事、殿さまは島女に、茶を持ってくるよう命じました。 
 島女はしばらくして、茶を持ってもどって来ました。 
 ところが部屋へ入ろうとしたとき、うっかり敷居(しきい)をふんでしまい、そのひょうしに、 
 グーー! 
と、妙な音が出たのです。 
 それを聞いた殿さまは、 
「これ、今の音は何じゃ?」 
と、尋ねました。 
「お許し下さいませ、敷居がきしんだのでございます」 
 島女が答えると、殿さんは笑いながら、 
「敷居ではのうて、お前の尻がきしんだのではないか?」 
と、冗談でいいました。 
 すると、そばにいた家来たちも、クスクスと笑いました。 
 島女は顔をまっ赤にすると、おじぎをして、逃げるように部屋を出て行きました。 
 ところがその夜、島女は城を出たきり、いつまでたっても戻ってこなかったのです。 
 心配した女中たちが探しに行くと、なんと大津の町外れの海に浮いている島女が見つかったのでした。 
 いくら冗談でも、島女にしてみれば死ぬほど恥かしかったのでしょう。 
 これを知った殿さまは、自分の軽い冗談を大変後悔して、あわれな島女のために、城山神社(しろやまじんじゃ)の境内に祠(ほこら)を建ててやりました。 
 そしてこの島女が大変な豆腐好きだったので、人々はこの祠の前を通るときは、かならず豆腐を供えてやったそうです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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