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第 17話
お浪草(おなみそう)
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むかしむかし、長良川(ながらがわ)の近くの柿野(かきの)という村に、お浪(なみ)というそれはそれは美しい娘がいました。
美しいだけでなく、村でも評判の働き者で親孝行でした。
ですから、あっちこっちから嫁にほしいという話がありましたが、お浪は源三(げんざ)という男に心を寄せていました。
源三の方もお浪が好きで、一日の仕事が終えるとお浪がよく洗い物に来る谷川べりに会いにやって来ました。
二人は目と目で心を通じ合わせて、いつしか祝言の日取りも決まりました。
そんな、ある日の事です。
「今日もお浪に会えるぞ。お浪のことを思えば、仕事もはかどる」
源三は仕事を終えて、いつものように谷川べりにやってきました。
お浪は、切り干し大根を洗い終えたところでした。
いつものように源三はお浪の顔をみましたが、目と目が合うどころか、お浪は目をそらして逃げるように帰ってしまいました。
「お浪、お浪。祝言も近いというのに、そんな他人行儀な顔するなよ」
源三の声もむなしく、お浪は家に帰っしまいました。
(どうしたというのだ? お浪があんな顔をおれに見せたのは初めてだ)
源三はだんだんと心配になって、家に帰っても不安で眠れません。
そこで、お浪の家に行くことにしました。
するとお浪の部屋にはまだ灯がともっていたので、源三は、
「お浪!」
と、呼びました。
すると障子に大きな影がふくれあがりました。
よく見ると、それは大蛇でした。
「・・・!」
蛇の嫌いな源三は無我夢中で家に帰り、気がつくと寝床でがたがたとふるえていました。
その後、村ではお浪がいないと大騒ぎになり、ついに見つかりませんでした。
それからしばらくして、源三はお浪の夢を見ました。
「いとしい源三、私が源三をしたう気持ちは変わりませんが、どうか許して下さい。私はあの山に住む竜の子を七人も生んでしまいました。もう、お前の前に出る事は出来ません。あなたと仲むつまじいところを竜に知られ、やきもちをやかれて、私は山へ連れて行かれました。どうか私のことはあきらめて、他にいい人を探して下さい」
その後、柿野では今まで見たこともない可憐な白い花が咲くようになり、いつの間にか人々はその花を「お浪草(なみそう)」と呼び始めたそうです。
おしまい
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