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第 24話
西坂地蔵堂(にしざかじぞうどう)
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むかしむかし、長崎の樺島町(かばしまちょう)に、一人の漁師が住んでいました。
ある日の事、漁師はいつものように沖に出ましたが、その日は一匹もとれません。
「おかしな日じゃのう。今までこんな事は、一度もなかったが」
漁師はそう言いながらも網をおろしましたが、そのうちに眠たくなってきて、こっくりこっくりと舟の上でいねむりを始めました。
さて、どれくらいたったでしょう。
グン!
急に網が重くなったので、漁師はあわててとび起きると、力いっぱい引き上げました。
「これはすごい引きだ! きっと大物に違いない!」
でも網にかかっているのは魚ではなく、一体の地蔵さまだったのです。
「あれまあ、地蔵さまとは。魚は捕れなんだが、これはありがたい」
漁師はさっそく地蔵さまを舟に上げると、村に飛んで帰りました。
そして、村の年寄りに相談したところ、
「こりゃあ、どこぞの寺にまつった方がいいぞ」
と、言われたので、天王山聖徳寺(てんのうざんしょうとくじ)という寺に、安置してもらうことになったのです。
次の日、さっそく地蔵さまを運ぼうと、村の男が集まりました。
みんなは交替で地蔵さまをかつぐと、大黒町から西坂を登り、どんどん進んでいきました。
そして途中、ひと休みすることになって、木陰に地蔵さまをおろしたのです。
ところが出発しようとしたとき、どうしたことか地蔵さまが動かなくなってしまいました。
まるで鉛(なまり)を入れたみたいに重くなって、どうしても持てないのです。
「不思議じゃのう。まるで、行くのを嫌がっているようじゃ」
「仕方ない、今日はこれで終わりにして、明日また来るとしよう」
その日は、そこに置いて帰りました。
そしてその晩のこと、地蔵さまを運んでいた一人の男の夢枕に、あの地蔵さまがあらわれて、
「西坂に帰りたい。西坂に帰りたい」
と、言うのです。
これを聞いて、みんなはびっくりしましたが、
「でもまあ、地蔵さまがそう言いなさるのなら、仕方ない」
と、さっそく西坂にお堂が建てられて、地蔵さまはそこに安置されたのです。
長崎の西坂公園には、今でもその地蔵堂が残されており、漁の神さまとしてお参りに来る人がいるそうです。
おしまい
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