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      第 26話 
          
          
         
竜と琵琶法師 
長野県の民話→ 長野県情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
       
      ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
      
       
      投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読 
      【大人もぐっすり眠れる朗読】心あたたまる龍の昔話集 元NHKフリーアナ 
       
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      投稿者 「あーる」  【眠れる朗読】 
      
      
       むかしむかし、志賀(しが→琵琶湖南西岸一帯の古称)の山道を一人の琵琶法師が歩いていました。 
 長い旅に疲れた法師は、山の池のほとりに腰をおろしてひと休みし、そこで法師は琵琶を手に取り、美しい調べを弾いたのです。 
 ところがそのとき、どこからともなく、 
「すまんが、もう一曲弾いてくだされ」 
と、声が聞えました。 
 そこで法師は、もう一曲、琵琶を弾いたのです。 
 すると突然、法師の目の前に大きな竜が現われて、法師に語りかけたのです。 
「わしはこの志賀の山に棲む竜じゃ。このところ元気が出ずに困っておったが、お前の琵琶の音を聞いて力が湧いてきた。その礼にお前だけに教えてやろう。わしは祭りの夜に大水を出して、ふもとの村を押し流すつもりじゃ。お前だけは早く逃げるがよい。それからこの話は、決して他人に言うでないぞ」 
 こう言ったとたんに、竜は姿を消しました。 
 さて、法師が山を下りて、ふもとの村へ入ると、村人たちは祭の用意で大忙しです。 
 法師は竜に言われた通り、何も言わずに通り過ぎようとしました。 
 しかし村人たちのことが気になって、仕方ありません。 
 そしてとうとう、思い切って村人たちに叫んだのです。 
「大変じゃ! 今夜、大水が来るぞ! 早く逃げてくれ!」 
 法師の声を聞いた村人たちは、大急ぎで高台へと逃げました。 
 そして、その夜のこと。 
 にわかに稲妻が光ったかと思うと、大きな雷の音とともに大雨が降り続けたのです。 
 そして竜の予告通りに、大水が村を襲いました。 
 やがて雨もあがり、高台に逃げた村人たちは法師のおかげで命びろいをしました。 
「ああ、あの法師さまのおっしゃったことは本当じゃった。おかげで、わしら村のもんはみんな助かった。あのお方は、一体どこへ行かれたのか」 
 村人たちは法師を探しましたが、法師の姿はどこにもありません。 
 それから数日後のこと。 
 村の若者が志賀の山へ登ると、志賀の山の池に法師の琵琶が浮かんでいるのを見つけたのです。 
 竜との約束を破った法師は、竜に命を絶たれてしまったのです。 
「ああ、法師さまは、わしらの身代りになったんじゃ。本当に立派なお方じゃ」 
 村人たちは、心から法師に礼を言いました。 
       
      おしまい 
         
         
         
        
 
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