福娘童話集 > 日本民話 > その他の日本民話 > 冬の竹の子
第 65話
冬の竹の子
佐賀県の民話 → 佐賀県情報
・日本語 ・日本語&中国語
むかしむかし、とても親思いの息子が、年寄りのお母さんと二人で住んでいました。
ところがある年の冬、お母さんが病気になってしまったのです。
息子はもう心配で心配で、ごはんものどを通りません。
昼も夜もつきっきりで、お母さんの看病をしました。
雪の降るある日、お母さんが、
「ああ、竹の子が食べたい」
と、言いました。
でも竹の子は春から夏にとれるもので、雪の降る季節にとれるはずがありません。
(どうしよう? でも何とかして、お母さんの願いをかなえてあげたいなあ)
そこで息子は、お母さんに言いました。
「それじゃ、山へ行って竹の子を探してくるから待っていて」
息子は山奥の竹やぶを見つけては、竹の子は無いかと探しましたが、竹の子は一本も生えていません。
「ない、ないよ」
でもお母さんの事を思うと、ないとわかっていても、探さずにはいられないのです。
「神さま、お願いです。一本でいいから、竹の子を下さい。お母さんに、食べさせてあげたいのです」
息子は竹やぶを見つけるたびに、手を合わせました。
そのうちに、あたりがだんだん暗くなってきました。
(仕方がない。今日は、あきらめよう)
息子が帰ろうとした時です。
なんと目の前に、一本の竹の子がのびているではありませんか。
「あった!」
むちゅうで竹の子を掘り出すと、飛ぶようにして家に帰りました。
息子はさっそく竹の子を煮て、お母さんに食べさせてあげました。
「ああ、なんてうまい竹の子じゃ」
お母さんは、涙を流しながら竹の子を食べました。
すると不思議な事に、次の日からお母さんの病気はだんだんよくなり、やがてすっかりもとの体に戻ったという事です。
おしまい
|