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第 66話

犬のお使い

犬のお使い
兵庫県の民話兵庫県情報

日本語 ・日本語&中国語

 むかしむかし、切戸(きりど)の智恩寺(ちおんじ)には、シロという名の犬がいました。
 和尚さんはこのシロを可愛がって、自分の食べる物を減らしても、シロには満腹になるまでご飯を与えるのです。
 それにまたシロはかしこい犬で、毎日、一里(いちり→約4キロメートル)ほど離れた宮津(みやず)の町へお使いに行くのが、シロの仕事だったのです。
 ですから、寺の小僧が少しでも失敗をすると、
「何でお前は、そんなに覚えが悪いんじゃ。ちっとはシロを見習ったらどうじゃ」
と、しかるので、小坊主さんはだんだん腹が立ってきて、何とかシロの鼻を明かしてやろうと思うようになったのです。
 そんなある日の事、いつもは和尚さんに催促(さいそく)されてしぶしぶ働く小坊主さんが、その日はいそいそと鐘つき堂へ行って、いつもより半時(→約一時間)も早いのに、
「ゴォーン! ゴォーン!」
と、鐘をつきならしたのです。
 さあ、宮津の町はずれを戻りかけていたシロは、かわいそうに『暮れの鐘までに帰る』という、和尚さんとの約束を破ってしまったと思ったのです。
 シロは、
「くーん」
と、悲しい声をあげると、約束を破ったおわびに、崖から飛び降りて死んでしまったのです。
 この知らせを受けた和尚さんは、まるで我が子を亡くしたかのように悲しみ、三日三晩、シロのためにお経をあげてやりました。
 また村人たちも、シロの死を悲しんで、いつしかシロが死んだ崖には、小さな石碑が建てられたのです。
 そしてその石碑には、いつも季節のきれいな花が供えられたという事です。

おしまい

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