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      第 102話 
          
          
         
はだかにされたエンマ大王 
石川県の民話 → 石川県情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
      
       むかしむかし、能登(のと→石川県)には、さんえもんという、とんちの上手な人がいて、みんなからは『さんにょも』とよばれていました。 
         
 そのさんにょもも、とうとう死んでしまい、あの世へ行く事になりました。 
 今までずいぶんと人をだましてきたので、エンマ大王の前に行けば必ず、 
「お前は、地獄(じごく)行きじゃ!」 
と、言われるに決まっています。 
「うーむ。 
 なんとかして、地獄へ行かずにすむ方法はないだろうか? 
 地獄行きを決めるのは、エンマ大王だ。 
 エンマ大王は、死んだ人間全てをさばくいそがしい身じゃ。 
 いつもいそがしくしている者は、酒好きだが酒に弱いと決まっておる。 
 そんなエンマ大王に、酒を飲ませると・・・。 
 これじゃ!」 
 さんにょもはどこからか酒だるを手に入れると、エンマ大王に酒だるを差し出しました。 
「エンマさま。うまい酒を、持ってきました。わしをさばく前に、一杯いかがでしょう?」 
 酒だるを見たエンマ大王は、ゴクリとのどをならすと、 
「うむ。そうか、仕事中だが、それほど言うのなら、一杯ぐらいよかろう」 
と、酒を湯のみについで、グイッと飲みました。 
「おおっ、さすがはエンマさま。いい飲みっぷりですね」 
 さんにょもは空になったエンマ大王の湯のみに、また酒をつぎました。 
「ささっ、あと一杯」 
「もう一杯」 
「さいごに一杯」 
「おまけに一杯」 
 さんにょもはどんどん酒をついで、とうとう酒だるを空にしてしまいました。 
 
 さて、酒のまわってきたエンマ大王は、とろーんとした目になると、 
「ああ、少し、休ませてくれ」 
と、言って、そのままグウグウと寝てしまいました。 
「よしよし、今の間に」 
 さんにょもはエンマ大王の着物を脱がしてかんむりをはずすと、さっそくそれを自分の身につけて、その代わりに自分の着物を着せたエンマ大王を地獄へ放り込みました。 
 
 こうしてエンマ大王に化けたさんにょもは、生きていた時に悪い事をした人間がやって来ても、少しでも良いところがあると極楽(ごくらく)行きのハンコを押してやりました。 
 おかげでさんにょもは、とても評判の良いエンマ大王になったと言うことです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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