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第 105話

サルの一文銭

サルの一文銭
鳥取県の民話鳥取県情報

日本語 ・日本語&中国語

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おばあさんが機織(はたお)りで木綿(もめん)をつくり、おじいさんがそれを町へ売りに行って暮らしていました。

 ある日の事、おじいさんが木綿を町へ売りに行っての帰り道、どこからともなく、
「ウキー、ウキー」
と、サルの鳴き声がしてきました。
 見てみると向こうの木の枝に母ザルがいて、猟師(りょうし)が鉄砲(てっぽう)で狙っているところでした。
 母ザルは猟師に手を合わせて、
(助けてください)
と、おがんでいます。
 でも猟師はそんなことはおかまいなしに、今にも鉄砲の引き金を引こうとしています。
(いかん! このままではあの母ザルが)
 そう思ったおじいさんは、母ザルを助けようと、
「ハックショーン!」
と、とても大きなクシャミをしたのです。
 するとそのクシャミに驚いた猟師の鉄砲がそれて、おじいさんの肩に命中しました。
「わあ、わあ、おらが悪いんじゃないぞ! いきなりクシャミをした、お前が悪いんだ!」
 猟師はそう言うと、あわてて逃げていきました。

 さて、鉄砲に撃たれたおじいさんが肩を押さえながらうずくまっていると、どこからともなく子ザルたちが現れてきて、おじいさんの傷口をなめたり、薬草をもんではりつけたりして、おじいさんをかいほうしてくれました。
 そしておじいさんを、サルの家へ連れて行ったのです。
「先ほどは危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
 母ザルはそう言って、サル酒(さるざけ)や果物(くだもの)を次から次へと出してくれました。
 すっかりごちそうになったおじいさんが、
「親切にしてくれて、ありがとう。おばあさんが心配しているから、もう帰るよ」
と、言うと、母ザルは一文銭を一つ差し出しました。
「これはサルの一文銭といって、世にも大切な宝物です。
 命(いのち)を助けてくださったお礼に、差し上げます。
 これを神棚(かみだな)にまつっておくと、お金持ちになれますよ」

 さて、それからおじいさんは母ザルに言われたように、一文銭を神棚(かみだな)にまつって大切にしました。
 すると不思議な事におばあさんの機織りはどんどんはかどりますし、それをおじいさんが売りに行くと高い値段でどんどん売れるのです。
 やがておじいさんとおばあさんは大金持ちになりましたが、ある日の事、大切なサルの一文銭がなくなってしまったのです。

 そこでおばあさんは、家で飼っているタマという名のネコを呼んで言いました。
「タマよ、サルの一文銭を三日のうちに探しておいで。
 探して来てくれたら、おいしいご飯をたんと食べさせてやろう。
 でも探し出せなかったら、これだよ」
 そう言っておばあさんは、を抜いて見せたのです。
 ビックリしたタマはあわてて家を走り出て、すぐに一匹のネズミを捕まえました。
 そしてネズミに、こう言ったのです。
「ネズミよ、家の宝物が無くなった。
 三日のうちに、見つけて来い。
 見つけて来たら、命を助けてやる。
 もし見つけて来ないと、尻尾まで食ってしまうからな」
 ビックリしたネズミは食べられては大変とあちらこちらを探し回って、ついに隣の家のタンスの中からサルの一文銭を探し出しました。
 ネズミはそれをタマに渡し、タマはおばあさんに渡しました。
 おじいさんも、おばあさんも、タマも、ネズミも、みんな大喜びです。
 そしておじいさんとおばあさんの家は、いつまでもいつまでも栄えたと言うことです。

おしまい

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