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第 128話
もんじゃの吉
岩手県の民話 → 岩手県情報
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投稿者 : 神栖星花研究所 「神栖星花研究所」
むかしむかし、南部の国(なんぶのくに→岩手県)に、『もんじゃの吉(きち)』」という、とんちの上手な男がいました。
ある日の事、吉が山を歩いていると、キツネたちが集まって話しをしていました。
「長者(ちょうじゃ)のせがれが嫁を探しておるそうだが、なかなか見つからんらしい」
「長者ももう年だから、はやく孫の顔が見たいのだろう」
それを聞いた吉は、いい事を思いつきました。
(こいつはうまく立ち回れば、酒とごちそうにありつけるぞ)
そしてニコニコしながら、キツネたちに話しかけました。
「やあやあ、キツネどん。
おれと、手を組まないか?
長者にはおれから話をつけて、あぶらあげでもあずきご飯でもたくさん用意させるから、お前たちは花嫁と嫁入りの行列(ぎょうれつ)に化けてくれ」
それを聞いて、キツネたちは大喜びです。
「ほんとうか? よし、花嫁と嫁入りの行列はまかせておけ」
それから吉は、長者の屋敷へ行きました。
「長者さま。息子さまに良い嫁さまが見つかったから、おれがお世話をします。
長者さまは、あぶらあげやあずきご飯を用意してください。
今夜にも、嫁入りをさせますで」
「おう、それはめでたい話しじゃ」
長者は大喜びで、さっそく準備にとりかかりました。
その夜、吉は仲人(なこうど→結婚の仲介をする人)になって、嫁入り行列の先頭にたちました。
花嫁道具を運ぶ男たちや花嫁の親戚(しんせき)の人たちが、ちょうちんを手に長者の家にむかいました。
「これは大した花嫁行列だ。吉さん、よい嫁を紹介してくれた。
せがれも、喜んでおるぞ。
さあさあ、あがってくれ」
吉は長者の家にあがるとさんざんごちそうになって、おみやげもたくさんもらいました。
次の朝、長者の屋敷は大さわぎとなりました。
家中がキツネの足あとだらけで、花嫁や花嫁の親せきたちが一人もいないのです。
「さては、きのうの花嫁たちはキツネだったか!
もんじゃの吉め、キツネをそそのかして、よくもこのわしにはじをかかせてくれたな!」
長者はカンカンに怒って、吉の家へ飛んで行きました。
「やい、インチキ仲人! ごちそうと酒のお金をかえせ!」
ところが吉は、すました顔で言いました。
「へっ? あの、何の事でしょうか?」
「とぼけるな! お前が嫁を世話すると言って!」
「さあ、身におぼえがありませんなあ。
おそらくそれは、キツネのやつがわしに化けてイタズラしたんでしょう。
近頃のキツネは、悪知恵がはたらきますからね」
「ぐぐぐっ・・・」
吉は見事に、長者を追い返してしまいました。
おしまい
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