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第 141話
不思議な棒
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むかしむかし、ある山奥に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は貧乏でしたが、とても働き者で、朝から晩まで畑を耕したり、たきぎを拾ったりしていました。
「お金なんかなくても、こうして元気に働けるのが一番じゃ」
「そうですね。これもみんな、神さまのおかげですよ」
そう言って二人は、山の神さまに手を合わせるのでした。
さて、ある日の事、おじいさんが畑を耕していると、くわの先に何かがコツンと当たりました。
「おや? 木の根っこでもあるのかな?」
おじいさんが手でさぐってみると、地面から一本の棒切れが出てきました。
「なんだ、木の枝か」
おじいさんは棒切れを拾うと、後ろへポイと放り投げました。
すると棒切れはクルクルクルと三回回って、おじいさんの目の前にすとんと立ったのです。
「はて、何ともおかしな棒切れだ」
おじいさんは棒切れをつかむと、今度は空高く放り投げました。
すると棒切れは、今度も空中でクルクルクルと三回回って、またまたおじいさんの目の前にすとんと立ったのです。
それからおじいさんは何回も棒きれを放り投げましたが、何度やっても同じです。
不思議に思ったおじいさんは、おばあさんを呼んできて、同じように棒きれを放り投げさせました。
するとやはり、棒きれはクルクルクルと三回回って、おじいさんの目の前にすとんと立つのです。
「へえ、まるで生きているみたいだ」
おじいさんは棒きれを拾って、もう一度投げようとしましたが、おばあさんの投げた棒きれは土の上に立ったまま、びくともしないのです。
「おかしいぞ? まるで、地面に生えた木のようだ」
おじいさんは両手で力一杯引っ張りましたが、それでも棒切れは抜けません。
「おばあさん、一緒に手伝ってくれ」
二人は力を合わせて棒切れを引っ張りましたが、それでも棒きれはびくともしません。
「仕方がない。根元を掘ってみよう」
おじいさんは、その棒きれの根元をくわで掘り起こしました。
すると、
カチン!
と、今度はくわの先に何か固い物が当たりました。
「おや? 石でもあるのかな?」
おじいさんが手で探ってみると、土の中から小さなつぼが出てきました。
「何のつぼだろう?」
おじいさんはつぼのふたを開けてみてびっくり。
なんとつぼの中には、小判がびっしりつまっていたのです。
「これは大した物だ。これはきっと、山の神さまが授けてくださったに違いない」
「そうですね。山の神さまの贈り物なら、ふもとの人たちにもわけてあげましよう」
そう言って二人はつぼの小判を全部、ふもとの人たちに分けてあげると、自分たちはまた、せっせとまじめに働いたと言うことです。
おしまい
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