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第 165話
瓜生権左衛門(うりゅうごんざえもん)
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むかしむかし、福井県越前市の大塩八幡宮(おおしおはちまんぐう)に、瓜生権左右衛門(うりゅうごんざえもん)という、大変力の強い神主(かんぬし)がいました。
ある日の事、江戸に集まっている殿さま同士が自分の国の力持ち自慢をはじめました。
でも、どの殿さまも自分の国の力自慢が一番だと言います。
「ならばどうだろう。それぞれの力持ちを集めて、相撲をとらせてみては」
「賛成だ」
ところが一番自慢をしていた福井の殿さまの力士が、西国の大名のおかかえ力士に負けてしまったのです。
くやしがった福井の殿さまは、負け惜しみで西国の大名に言いました。
「ふん。あれはほんの小手しらべで、真の力持ちは国におるわ」
「そうか。それではその真の力持ちと、対決しようではないか」
福井の殿さまは、
(しまった。これは、大変なことになったわ)
と、思いましたが、けれど少しも顔には出さずに家来たちに言いました。
「国に連絡をして、一番の力持ちを連れてこい」
こうして神主の権左衛門(ごんざえもん)が、江戸にやってきたのです。
そして西国からは獅子虎之助(ししとらのすけ)という、いかにも強そうな力士がきました。
いよいよ取り組みの日になりました。
権左衛門と虎之助が土俵にあがると、虎之助の方が権左衛門より頭一つ分ほど大きな大男でした。
(大丈夫だろうか? 今度も負けたら、いい笑いものだぞ)
福井の殿さまは、心配でたまりません。
権左衛門は持ってきた大きな竹を『ブン!』とひと振りすると、大きな竹をいくすじもの竹ひごにしました。
そしてそれを帯と、はち巻きにして、自分の力強さをみんなに見せました。
すると虎之助も負けじと頭ほどもある銅の玉を持ってくると、両手で『グニューー』と引きのばして、同じように帯と、はち巻きにしてみせました。
どちらもすごい怪力です。
やがて両力士は、土俵のまん中で四つに取り組みました。
両力士の力は互角に見えましたが、しばらくすると大男の虎之助が権左衛門をヒョイとかかえて頭上高くさしあげました。
「これで、お前の負けだな」
「なんの、越前では地面に倒れてはじめて負けとなるのだ」
「ならば、そうしてやろう」
虎之助は権左衛門を地面に叩きつけようとしました。
すると体の軽い権左衛門はくるりと宙返りをして、虎之助のあごを思いきり蹴りつけたのです。
「あっ!」
あごを蹴られた虎之助は目を回して、『ドスン!』と土俵に大きな尻もちをついてしまいました。
「あっぱれ! 権左衛門よ、お主こそは日本一の力持ちじゃ!」
福井の殿さまは大喜びです。
「いまのはまぐれだ! もう一番とりなおそう」
西国の大名が言いますが、福井の殿さまは耳を貸そうとはしません。
「越前は、一番勝負となっている」
それどころかその場で、権左衛門に五十石のほうびをとらせたのです。
それからしばらくしたある日、虎之助は負けた悔しさから病気になってしまい、あっけなく死んでしまいました。
やがて死んだ兄の敵(かたき)をとるために、虎之助の弟が権左衛門に仇討ちをいどみました。
「兄の代わりに力比べをしたい! 兄の仇を取ってやる!」
この弟は、兄の虎之助以上の大男です。
(このままじゃあ、殺されるかもしれん)
そう思った権左衛門は病気のふりをしながら釜にいっぱいのごはんを死ぬ気でたいらげると、弟に言いました。
「ああ、病気のせいで、これだけしか食べる事が出来ない」
これを見た弟は大変驚いて、
「病気でありながらも、何という大食いだ! 兄に勝ったのは、まぐれではなかったのか」
と、そのまま家へ帰っていったということです。
おしまい
→ 大塩八幡宮[スポット詳細]-じゃらん観光ガイド
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