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第 190話
明き目川
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宮城県本吉郡の八幡川の支流の桵葉川(たらばがわ)に、旅の琵琶法師(→びわをひきながら平家物語を唱った盲人)が現れました。
宿屋の主人が琵琶法師にどこへ行くかと尋ねると、琵琶法師は入谷(いりや)に行ってみたいと答えました。
「法師さま。入谷に行くのは結構ですが、あそこは道が狭くて崖も多いので、目の不自由な人が一人で通れる場所ではありません。もう少しここに泊まって、誰か案内の者を探してはどうでしょうか」
宿屋の主人が引き留めますが、法師は首を振って言いました。
「お心遣いはありがたいが、なぜだか、入谷に一人で行かなければならない気がするのです」
「ですが、もし何かあっては」
「なあに。私は今まで日本中を歩いてきました。どんな道でもしっかり歩けます」
法師はそう言って、宿屋を後にしました。
しかし実際にやって来ると、旅慣れたさすがの法師も足がすくみました。
崖はとても急で、谷底から冷たい風が吹き上げて法師の体を揺らします。
「宿屋の主人が止めるのも無理はない。いつもなら引き返すところだが・・・」
どうしても一人で行かなければならない気がした法師は、用心しながらゆっくりゆっくり足を進めました。
でも、法師はうっかり石につまずいてしまい、そのまま真っ逆さまに谷底に落ちてしまいました。
しばらくして気がついた法師は、上を見上げて崖の途中に生えている木に服を引っかけた跡があるのを見つけました。
「やれやれ、あの木に運良く引っかかって、助かったのだな。
あの木がなければ、死んでいただろう。
・・・あの木? ・・・木?
おおっ! 見える、見えるぞ! 目が見えるぞ!」
崖から落ちた衝撃なのか、不思議な事に盲目だった法師の目が見えるようになっていたのです。
この事があってから、人々はこの川の事を目が開いて見える様になったとの意味を込めて『明き目川→秋目川(あきめがわ)』と呼ぶようになりました。
そして琵琶法師が落ちた崖を『琵琶転がし』と呼ぶようになりました。
おしまい
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