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第 194話
キセルおさめ
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むかし、江戸いちばんの大きなキセル(→詳細)屋へ、お城から使いの者がとんできました。
「キセルを三千本。あすの朝までに、かならずおさめるように」
と、いう注文です。
さあ、たいへん。
いくら大きなキセル屋でも、一日で三千本をおさめるのは、よういなことではありません。
家じゅうの者はもちろん、しろうとまでやとって手つだわせ、夜も寝ずに、なんとか、らお(キセルの火皿と吸口とを接続する竹管のこと)三千本に、がん首、吸い口を取り付けて、ホッとしたとき、
コケコッコー!
「それ、朝が来たぞ!」
主人は、番頭(ばんとう→詳細)たちに荷物をせおわせ、いそいでお城へおさめに行きました。
が、とちゅうで、
「しまった!」
ふと気がついて、まっ青になりました。
「キセル三千本はできたが、らおのふしをぬいてなかったわい!」
らおは、竹でできています。
竹のふしをぬかなくては、息がとおりませんから、タバコがすえるわけがありません。
「すえぬキセルをおさめたのではな。といって、やくそくどおりにおさめねば、こっちの首がとぶかもしれぬ。・・・ええい、ままよ。そのときは、そのときのこと」
キセル屋はかくごをきめて、三千本のつまったキセルを、そのままお城にとどけました。
お城につくと、役人が受けとりに出てきました。
その顔を見て、主人はドキッとしました。
役人たちの中でも、この役人は、こまかいことまでよくしらベる、商人いじめのうるさい役人です。
キセル屋は、あぶら汗をながし、ヒヤヒヤしながら見ていました。
役人は、まずキセルのかずをじぶんでしらベて、
「よし。三千本、まちがいなし」
こんどは、らおに息もれがないかと、わざわざ一本一本とりあげて、がん首ヘおやゆびをおしあて、プッとふいてみては、
「よし」
ふいてみては、
「よし」
と、三千本を、みんなじぶんでしらべました。
そして、
「よくぞ、まにあわせた。キセル三千本、たしかに受けとりもうした」
と、いって、ひっこみました。
キセル屋は、ひや汗をふき、走るように家にかえってきたということです。
おしまい
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