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第 202話
白い福ネズミ
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むかしむかし、ある村に、働き者のおじいさんが住んでいました。
毎日毎日、一生懸命働いているのですが、暮らしはちっとも良くなりません。
そんなある年の一月二日、おじいさんは不思議な初夢をみたのです。
まぶしいお日さまの光の中から、杖をついたおじいさんが現れて、
「わしは神さまの使いじゃ。お前さんは実によく働いておる。だが、このままでは駄目じゃ。というのも、お前は食べ残しの野菜の切れはしなどを、台所の流しへ捨てたままにしておる。それがつまって、実に汚い。ドブをきれいに掃除してみよ。さすれば、良い事がおこるであろう」
神さまのお使いはそう言って、消えてしまいました。
目を覚ましたおじいさんは、さっそく台所の流しやドブをきれいにしはじめました。
すると、一匹のネズミが出てきました。
よく太った、まっ黒なネズミです。
ネズミは家の中に入り込むと、奥の部屋の神棚へと飛びあがりました。
そして供えてあるお餅の裏に逃げこむと、しばらくしてお餅と同じようなまっ白い姿になって、顔を出しました。
その日から畑へ行くと、白ネズミはあとからついてきて、小さな手で畑の土を掘り返したりして手伝ってくれます。
おかげでおじいさんの仕事がはかどり、少しずつですが、お金もたまるようになって、暮らしも豊かになっていきました。
さて、それをうらやましく見ていたのが、となりのおじいさんです。
となりのおじいさんは白ネズミを借りてくると、お餅をまき散らしたとなりの部屋に入れました。
そして夜になるとふとんに入り、ふすまのすきまから様子を見ていました。
カリカリお餅をかじっていた白ネズミは、夜になるとたくさんの糞をしましたが、気のせいか、その糞が白くかがやいているように見えました。
「そうか。あのネズミは餅を食って、銀の糞をするんだ。これでおらも大金持ちじゃ」
次の日の朝、目を覚ましてとなりの部屋をのぞくと、足の踏み場もないほど、たくさんの白ネズミがはいずりまわっていました。
「おう、たくさんの仲間をつれてきたな。ありがとうよ。もっともっと、銀の糞をしてくれよ」
欲深じいさんはニコニコしながら、一匹の白ネズミの頭をなでました。
するとネズミは「チュー」と鳴いて、たちまち、まっ黒なドブネズミになってしまったのです。
「ややっ、これはどうしたことじゃ!」
ほかのネズミを捕まえると、みんな同じように「チュー」と鳴いて、ドブネズミに変わってしまいました。
そして光っていた銀の糞も、まっ黒な本物の糞になって、欲深じいさんの家の中は糞だらけになってしまったと言う事です。
おしまい
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