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第 223話

おまけだけの買いもの

おまけだけの買い物
千葉県の民話千葉県情報

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 むかしむかし、あるところに、ともて利口な男の人がいました。
 その男が何でもも売っている大きな店に行き、並んでいる品物を手に取ってはながめるのですが、少しも買う様子がありません。
 それを見ていた店の主人が、我慢出来ずに言いました。
「お客さま。何か気に入った物がありますか? たくさん買って頂けたら、うんとおまけしますよ」
 それを聞いた男は、『ひっかかったな』と言う顔で、ニヤリと笑いました。
「おまけとは、それはありがたい。では、このわらぞうりを十足買ったら、一足ぐらいおまけしてくれるかね?」
「いいですとも。十足も買って頂けるのでしたら、一足ぐらいおまけしましょう」
「うそじゃないな?」
「もちろん。うそなんか言いません」
 男はわらぞうりを一足つかむと、今度はざるの置いてある所へ行きました。
「このざるも十個買ったら、一個おまけしてくれるかね?」
「はい。十個も買って頂けるなら、一つはおまけしましょう」
 男の人はざるを一つつかむと、その中へわらぞうりを入れました。
 それから今度は、茶わんの並んでいるところへ行きました。
「この茶わんも十個買えば、一つはおまけしてくれるかね?」
「ええ、いいですとも。十個も買って下さるなら、一つはおまけしましよう」
 男の人は茶わんを一つ、ざるの中へ入れました。
 それからおわんにしゃもじと、何でも手当たり次第に一つずつざるの中へ入れます。
 店の主人は、不思議に思って尋ねました。
「どうして、一つずつ入れるのですか?」
「なに、おまけの物から先に入れているのだ。十個も持って歩けないだろう?」
「なるほど、それは確かに。でも、今まで買って頂いた物はその十倍なので、とても一人では持って帰れませんね。何でしたら、店の者に家まで届けさせましょうか?」
 すると、男の人は、
「いや、おまけをしてもらった上に、そんな事をしてもらっては申し訳ない」
と、言うなり、品物のいっぱい詰まったざるをかついで店を出ました。
「あの、もしもし、お客さん、まだお金をもらっていませんが」
 店の主人が慌てて呼び止めると、男の人はすました顔で言いました。
「今日は急ぐから、おまけしてもらった物だけもらう事にするよ。おまけの物ばかりだから、金は払わなくてもいいだろう」
「へっ? それは、その・・・」
 店の主人が首をひねっている間に、男の人はどこかへ行ってしまいました。

おしまい

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