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第 227話

お金入りの米だわら

お金入りの米だわら
石川県の民話石川県情報

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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人も子供もぐっすり睡眠朗読】石川 富山 新潟県の昔話集 元NHKフリーアナ 読み聞かせ

 むかしむかし、ある村のお寺に、とても力持ちの和尚(おしょう)さんがいました。
 もう、すっかり年を取っているのに、重い米だわらをヒョイと持ち上げてしまうのです。
 そればかりか、力の弱い若者たちを見ては、
「こらこら、若い者が米だわら一つ持ち上げられないでどうする。そんな事じゃ、一人前のお百姓(ひゃくしょう)になれんぞ!」
と、叱りつけるのです。
 だから村の若者たちは、面白くありません。
「年寄りの和尚さんから馬鹿にされるなんて、くやしいなあ」
「そうだ。何とかして、和尚さんをやっつける方法を考えよう」
 若者たちは集まって、相談をしました。
 すると、一人の若者が言いました。
「いくら和尚さんだって、お金入りの米だわらは担げまい」
「何? お金入りの米だわらだって?」
 みんな、首をかしげました。
「そうさ、米だわらの中に、米と一緒にお金をどっさりと入れておくのさ。すると米だわらは何倍も重たくなる。そいつを和尚さんに担がせるんだ」
「なるほど」
「さあ、わかったら出来るだけ重いお金を集めて来い」
 若者たちは手分けして、重い銅のお金をたくさん集めてきました。
「しかしな、もしこのお金を取られてしまったらどうする?」
「大丈夫さ。こんなに重たいんだ、いくら和尚さんでも、持てるはずがない」
「なるほど、これは確かにこれなら担げん」
 そこでみんなは、お金の入った米だわらをお寺へ持って行きました。
 すると、和尚さんが出て来て言いました。
「何だ。いい若い者が、たった一ぴょうの米だわらをみんなで担ぐとは。全くなさけない」
 若者の一人が、くやしいのを我慢して言いました。
「とんでもない。この米だわらは特別で、いくら力持ちの和尚さんでも一人では担げませんよ。もし一人で担げたら、わしらはどんな事でもしましょう。・・・でも、担げなかったら二度と、わしらを叱ったり、馬鹿にしたりしないで下さいよ」
「よしよし、わかった。約束しよう。何が入っているか知らんが、この米だわらを一人でかつぐ事が出来たら、この米だわらをもらっても良いかな?」
「いいですとも。まあ、担げるならね」
 若者たちみんなは、
(いくら何でも、こんなに重たい物を担げるはずはない。この勝負はおれたちの勝ちだ)
と、思いました。
「それじゃあ、担ぐぞ。ペッペッ」
 和尚さんは両手に滑り止めのつばをつけると、米だわらをグイッと掴みました。
「おおっ! なるほど、確かにこいつは重いわい」
 それを見て、若者たちは顔を見合わせて喜びました。
(見ろ。やっぱり、持ち上がらないぞ)
(さあ、今に手を離すぞ。手を離したら、みんなで大笑いしてやろう)
 ところが和尚さんは、重い米だわらをヒョイと持ち上げると、そのまま肩に乗せました。
「あはははは、多少は重たいが、この程度ならあと三つは担げるぞ。さて、約束通りにこいつはもらったよ」
と、言って、そのままお寺に帰って行きました。

おしまい

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