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第 236話

長者の心を変えた仁王さま

長者の心を変えた仁王さま
富山県の民話富山県情報

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 むかしむかし、田の又(たのまた)というところに板東長者(ばんどうちょうじゃ)と呼ばれるお金持ちが住んでいました。
 でもだんだんと貧乏になって家が傾き始めたので、長者は家を立て直そうと使用人たちを牛馬(ぎゅうば)の様にこき使いました。
 その為に使用人は一人減り、二人減りと、とうとうみんな止めてしまいました。
 そうなると働く者がいないので、家はますます貧乏になっていきます。

 そんなある日の事、筋骨(きんこつ)たくましい大男がやって来て、長者に頼みました。
「真面目に働くから、どうかここで働かせて下さい」
 そこで長者が試しに大男を使ってみると、大男は朝早くから夜遅くまで、それはとても真面目に働きました。
 感心した長者は、大男に言いました。
「お前は本当に良く働くな。さてそろそろ、お前の給金(きゅうきん→給料)を決めようと思うが、何か望みはないのか?」
 すると大男は、長者にこう言いました。
「取り入れが終わったら、イネをひとかつぎ頂くだけで結構(けっこう)です」
「おお、たったひとかつぎでいいのか。よし、約束しよう」

 さて、その年の秋は、大男のおかげで大豊作(だいほうさく)となりました。
「では、約束のひとかつぎを頂きます」
 大男はそう言うと、刈り取ったイネを全部ひとまとめに縛り、小山の様に大きくなったイネの束を、軽々と背負って行きました。
 それを見て、長者はびっくりです。
「おっ、おい、ちょっと待ってくれ!」
 長者が後を追いかけると、大男は法福寺(ほうふくじ)の仁王門(におうもん)の前でパッと姿を消しました。
「どっ、どこへ消えたんだ?!」
 長者が仁王門にやって来ると、何と門前に泥まみれのワラジがかけてあったのです。
 そのワラジは、長者が大男に与えたワラジでした。
「も、もしや」
 長者がそばにある仁王像の足元を見てみると、その仁王像の足は泥だらけでした。
「そうか、そうだったのか・・・」
 長者は、自分の欲深い心をいましめる為に、仁王さまが姿を変えて現れた事に気づきました。
 そしてその日から心を入れ替えた長者は、出て行った使用人たちを呼び戻すと使用人たちと一緒に真面目に働き、傾いていた家を今まで以上に栄えさせたという事です。

おしまい

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